「複数拠点生活に関する基礎調査2020年7月」結果を公表/不動産流通経営協会(FRK)
「複数拠点生活」を行っている人は6.6%、行いたい人は7.1%
この調査の「複数拠点生活」とは、「自身の主な住まいとは別に、週末や一年のうちの一定期間を異なる場所で生活すること」をいう。調査結果によると、複数拠点生活を現在行っている人(実施者)は6.6%、複数拠点生活を行いたい人(意向者)は7.1%を占めた。
実施者のサブ拠点の場所を見ると、40.1%は同県内、18.8%が同地方内、41.1%がその他地域となっており、メイン拠点とサブ拠点を同県内または首都圏内や関西圏内といった同地方内に持っている人が多い。メインからサブ拠点までの移動時間は平均で2.3時間、サブ拠点の滞在日数は平均で1年当たり66.7日だが、移動時間は30分以内から5時間以上まで、滞在日数は10日未満から300日以上まで、実に幅広く分布しているのが特徴だ。
つまり、複数拠点を行き来する生活の仕方は、人それぞれでかなり異なるようだ。
やむを得えない事情を抱えた人もいるが、趣味的な理由の人が多い
複数拠点生活を行う理由では、「転勤・単身赴任」、「通勤通学時間の短縮」、「親族の介護」、「子や孫の世話」、「相続・所有物件の管理」など、やむを得ない理由を挙げる人も多く、この調査では消極的理由としている。とはいえ大半は、「避暑避寒や癒やし」、「趣味満喫」、「自然に触れる」などの趣味的な理由や、「仕事の場」、「他地域での交流」などの仕事や地域交流を理由に挙げており、この調査では積極的理由としている。
これを大分類して実施者と意向者で比べてみると、実施者のほうが消極的理由によるものが多く、意向者では特に趣味嗜好による積極的な理由を目的として複数拠点生活を検討する人が多いことが分かる。
メイン拠点とサブ拠点の物件は、いずれも持ち家が多い
では、サブ拠点の物件は購入したのか、賃貸なのか、どちらだろう?
実施者にサブ拠点は持ち家か賃貸かを聞くと、持ち家が75.3%と圧倒的に多く、なかでも持ち家戸建てが49.9%と全体の半分を占める。ただし、持ち家の中には、相続した実家なども含まれるため、実施者・意向者それぞれにメイン拠点とサブ拠点の住戸種別の組み合わせを見たのが次の表になる。
メイン拠点は持ち家、サブ拠点は実家でない持ち家の組み合わせが最も多く、実施者では32.6%、意向者では38.7%を占める。実施者のほうが意向者より少ないのは、実家に住まざるを得ない消極的な理由の人が多いからだろう。
また、全体として持ち家派はサブ拠点も持ち家、賃貸派はサブ拠点も賃貸という傾向が見られるように思う。となると、持ち家派は2拠点を所有するための取得費用の捻出という課題を抱え、賃貸派は2拠点の賃料を二重で支払うという課題を抱えるわけで、いずれにせよ費用の問題が立ちはだかるだろう。
新たな滞在先の維持費や確保費用がハードルに
「複数拠点生活を実施する上でのハードル」を複数回答で聞いたところ、「新たな滞在先の維持費」が最多となった。次いで、「新たな滞在先の確保にかかる費用」が続き、やはり複数拠点で生活するための維持費や住居費などの資金的な課題が浮かび上がった。
また、積極的な理由による実施者のうち20・30代だけで見ると、「購入にあたり住宅ローンが組めない」が高くなっている。若年層ではメイン拠点を取得した際の住宅ローンがまだかなり残っていて、新たにローンを組むことが難しいということだろう。
一方、消極的な理由による実施者では、移動時間や交通費の負担感が強いことが分かる。親の介護などで頻繁に実家と行き来する人も多いのだろう。
さて、複数拠点生活というと、悠々自適な家庭がリゾート気分を味わうという姿を思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、積極的な理由による実施者の世帯年収の平均は約680万円、中央値は500万~600万円なので、全般的にやや高めではあるが富裕層というわけでもない。
親や子どものため、仕事や地域交流のため、趣味嗜好のためと、それぞれ異なる理由により複数拠点で生活しているのが実態で、2拠点で重なる維持費や確保費用など資金面にも苦慮しながら、やりくりしているということだろう。
近年はコロナ禍で働き方に変化が見られる。働き方の変化で複数拠点生活がしやすくなり、実施者が増加するという時代が来るのだろうか。大いに注目したい。