2022年10月から「グリーンリフォームローン」の取り扱いを開始/住宅金融支援機構
最大500万円、返済期間10年以内、融資手数料・担保・保証不要など使い勝手がよい
まず、どういったリフォームローンなのか、商品概要を広報資料で見ていこう。
対象となるのは、住んでいる持ち家の省エネリフォームだけでなく、セカンドハウスや実家などの省エネリフォームも対象となる。年齢的にローンを借りづらい親に代わって実家の省エネリフォームを行う際に、融資を受けることもできる。
融資額は工事額が上限だが、最大500万円(※1)まで。ローンの返済期間は10年以内、全期間固定金利で申し込み時点の金利が適用される。また、融資手数料も不要で、無担保・無保証、団体信用生命保険は利用可能(※2)。住宅ローンを返済中でも利用しやすいなど、条件的には使い勝手がよいローンといえそうだ。
※1:省エネリフォームと併せて行うその他のリフォームも融資対象になるが、その場合は省エネリフォームの工事費の金額までが対象。
※2:住宅金融支援機構の「高齢者向け返済特例」を利用する場合は、有担保、団体信用生命保険の加入不可。
ただし、重要なのは「一定の省エネリフォームが求められる」という点だ。定められたリフォーム工事の実施を証明するために、検査機関による現場検査なども必要になり、その手続きや検査料などの負担が発生する。
「グリーンリフォームローン」の対象となる省エネリフォームの基準とは?
「グリーンリフォームローン」の適用金利などの詳しい内容はまだ決まっていないが、省エネの性能の水準によって、「グリーンリフォームローンS」という、さらに低金利なローンも提供される予定だ。
基準について簡単にいうと、住宅の一部でも「省エネ基準を満たす断熱性能を引き上げるリフォームをする」か、「指定の省エネ設備を設置する」かすれば、「グリーンリフォームローン」の対象になり、さらに「ZEH水準を満たす断熱性能を引き上げるリフォームをする」と「グリーンリフォームローンS」の対象になる。といっても、部位や省エネ性能の基準などが細かく定められているので、対象となるかは建築士や施工会社などにきちんと確認する必要がある。
「省エネ基準」、「ZEH水準」、「断熱等性能等級」について解説
「省エネ基準」や「ZEH水準」、その基準となる「断熱等性能等級」などの専門用語が多く出てくるので、少し説明を補足しよう。
まず、省エネ基準は国が法律で定めているもので、住宅の省エネ基準は法律の改正などに応じて、段階的に引き上げられている。ここでいう「省エネ基準」は最新の省エネ基準(平成28年基準と呼ばれる)のことで、2025年度までにすべての新築住宅に適合させることが義務化されることになっている。つまり、今ある住宅について現時点では、最新の省エネ基準に適合していない住宅が多いわけだ。
省エネリフォームで課題となるのは、住宅の構造体としての断熱性能だ。夏の暑さや冬の寒さを住宅に伝えにくく、室内の冷暖房による熱を外に逃がしにくくする「断熱性能」を高めることがカギになる。断熱性能のレベルのモノサシとして用いられているのが、「住宅性能表示制度」による「断熱等性能等級」だ。
住宅性能表示制度は、住宅の性能を統一基準で評価しようとするもので、新築の場合で10分野のモノサシがあり、その1分野に省エネ性能がある。その省エネ性能は、外皮(外気に接する建物の壁や天井、床、窓など)のモノサシとなる「断熱等性能等級」と一次エネルギー消費量のモノサシとなる「一次エネルギー消費量等級」に分かれる。
この断熱性能等級は等級1から等級5まであり、最新の省エネ基準は等級4、ZEH水準は等級5に該当する。なお、今後、さらに断熱性能の高い等級6や7が新設されることになっている。
ちなみに、ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称で、太陽光発電などで創出したエネルギー量と住宅内で消費するエネルギー量が年間でおおむねゼロになる住宅のこと。ここでいう「ZEH水準」とは、住宅の外気に接する壁や床などの断熱性能に注目したもので、ZEH住宅かどうかを問うているわけではない。
「グリーンリフォームローン」の申し込み方法や適用金利などの詳しい内容が決まるのはこれからだが、住宅の構造体の断熱性能を引き上げるリフォームをするには、それなりに費用もかかる。それを支援するために、対象となる省エネ基準のレベルは高いものの、比較的使い勝手のよいリフォームローンを用意しようということだろう。
説明したように、政府は住宅の省エネ性能の引き上げに力を入れている。そのため、最新の省エネ基準を新築の最低レベルとして、今後求める省エネ性能のレベルをZEHやそれ以上に引き上げようとしている。省エネ性能の高い新築住宅が増えれば、省エネ性能の低い既存の住宅へのニーズが薄れる可能性もある。
住宅内の暑さ寒さに対する快適性に加え、住宅市場への流通性なども考えると、リフォームをするなら省エネ性を高めるという選択肢も検討してはいかがだろう。