「結局、住宅ローンは年収の何倍まで組めますか?」 住まいのホンネQ&A(…

「結局、住宅ローンは年収の何倍まで組めますか?」 住まいのホンネQ&A(6)

(写真/PIXTA)

住宅購入には必ずついてまわる住宅ローン。住宅ローンはいったい年収の何倍まで組めるのか? 頭金は? 住宅は生涯で最も大きな買い物、といっても過言ではありませんから、悩みは尽きませんよね。

いったい、どんな考え方をしたらよいのでしょうか。さっそく、今回も回答を見ていくことにしましょう。

ノウハウ本の基準はアテにならない

住宅購入をするときには、ほとんどの人が住宅ローンを利用しますが、多くの方に共通するお悩みは「どれくらいのローン借入額が適切なのか?」ということ。これにはいくつかの説があり、そのほとんどは「住宅ローンは物件価格の何倍まで」とか「返済比率は○○%が目安」といったもの。住宅購入ノウハウ本を読むとかならずこうした目安が書かれていますが、こうした基準は、一言でいうとあまりにも大ざっぱすぎて、まったくあてにも参考にもなりません。

例えば「物件価格は年収の何倍まで」といった話。一般的にこの「年収倍率」は、7倍程度が目安とされることが多いのですが、住宅金融支援機構の「2016年度フラット35利用者調査」によれば、建売住宅融資利用者(平均年齢38.9歳)の年収倍率は6.5倍、マンション融資利用者(平均年齢42.0歳)で6.8倍。しかしこれらはあくまで平均値であり、実際にはかなりのばらつきがあるのです。3倍程度の人もいれば、10倍近い人もいます。

さらにこの話には「金利水準がどの程度か」といった視点が欠けています。例えば年収500万円の人が年収倍率7倍のマンションを買うとき、頭金が500万円(諸費用別途)あれば住宅ローンの額は3000万円ですが、金利1%と4%とでは、両者の支払額には天地の差が出ます。3000万円のローンを期間35年で組むとき、金利1パーセントなら月々の支払いは8万4686円ですが、4%だと13万2832円と、4万8146円も増加。総返済額に至ってはなんと約2022万もの差がつきます。

次に「返済比率」について。返済比率とは「年収に対する年間ローン支払い額」を指し「年間支払額÷税込み年収×100」で計算します。例えば年収500万円の人で返済比率25%なら年間ローン支払い額は125万円。ボーナスなしで毎月均等にならせば10万417円です。一般的な金融機関における返済比率の審査基準は、住宅ローンの種類や借入者の年収によって異なるものの、おおむね30~35%程度が目安となっています。住宅購入ノウハウ本を見ると「返済比率は25%が目安」などと書かれていることが多いのではないでしょうか。

しかし、こうした目安を各家計にあてはめるのはいかにも乱暴です。やはり住宅金融支援機構の「2016年度フラット35利用者調査」によれば、建売住宅融資利用者(平均年齢38.9歳)の世帯収入に対する返済比率は21.4%、マンション融資利用者(平均年齢42.0歳)で21.1%。

総返済負担率(世帯月収に占める1カ月当たりの予定返済額割合)の内訳をより詳しくみてみると、住宅ローンの返済額が家計に占める割合の15%未満の人が19.4%、30%以上の人が7.6%いるなど、やはりかなりのばらつきがあります。

マンションの場合は「管理費」や「修繕積立金」も

また例えばマンションの場合、ローン返済のほかに「管理費」や「修繕積立金」を毎月の支出として勘案する必要があります。しかも修繕積立金は多くのケースで、実際にかかる修繕費より低めに見積もられていることがあります。なぜなら新築時の積立金は、極力低めにして、買いやすくしていることがほとんどだからです。「長期修繕計画」を見れば、10年目・20年目などに積立金がアップする計画になっていることも少なくありません。そうであればもちろんそのことも踏まえておく必要がありますよね。

一般的なマンションの場合、目安として、専有面積平米当たり月200円程度は必要で、70平米のマンションなら1万4000円です。50戸以下の小規模マンションや、機械式駐車場などの設備があるマンションはもっと必要です。さらにこの修繕積立金は、屋根や外壁、廊下、エレベータといった共用部分のためのもの。室内(共用部)の修繕費用は別途でねん出する必要があります。

一戸建ての場合には管理費や修繕積立金の徴収はありませんが、屋根や外壁、内装や設備など、建物が経年劣化すればやはり修繕費はかかり、目安として年に建物代金の1%程度は確保しておく必要があります。1500万円の建物なら年間15万円、毎月にならせば1万2500円です。

さらに見逃せないのが固定資産税。新築の際は固定資産税が据え置かれやすくなっていますが、一戸建てなら3年、マンションは5年たつと優遇措置がなくなり、固定資産税額は2倍近くに跳ね上がることも踏まえておく必要があるでしょう。

(写真/PIXTA)

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「貸してくれる額」と返せる額は別物

こうしたコストも踏まえたうえで、住宅ローンの「返済可能額」を割り出しましょう。そのためには「家計の棚卸し」が必要です。

まずは税込み年収から、所得税・住民税、さらに社会保険料等を引いた手取り額を見てください。さらにそこから食費・光熱費・教育費・衣服費・遊行費などを引いていきます。一定の貯蓄も必要でしょう。こうして最後に残ったお金が、あなたがローン返済に充てられる金額です。変動金利なら金利上昇、転勤や転職といった将来可能性も踏まえておく必要があります。お子さんがいるなら教育費も。大学まで行かせるのか、私立か公立かによって費用も大きく変わります。こうした機会に、家族で、将来にわたってどんな暮らしをしたいのかといったことをお互いに話し合うのも有用ですね。

ところでこうした「家計の棚卸し」をすると、多くの家計で、何に使ったか分からない「使途不明金」が出てくるものです。これはたいていの場合、持ち歩いていた現金を使い、領収証やレシートがないときに発生します。

金融機関が「貸してくれる額」と、実際に「返せる額」は別物です。自身に合った無理のないマネープランを立てましょう。

最後に。住宅探しをしていると、どうしても予算をアップしたくなるもの。予算よりちょっと高い住宅は当然条件もいいのですが、物件情報を見ているうちに、当初決めていた予算を超えて背伸びしたくなる衝動に駆られるものです。これも無理のない範囲ならいいのですが、度を越すと当初のマネープランが無意味になってしまいますので注意してください。

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長嶋 修  さくら事務所創業者・会長
業界初の個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクション(住宅診断)を行う「さくら事務所」を創業、現会長。不動産購入ノウハウの他、業界・政策提言や社会問題全般にも言及。著書・マスコミ掲載やテレビ出演、セミナー・講演等実績多数。【株式会社さくら事務所
引用元: suumo.jp/journal

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