平均購入価格は首都圏が5517万円、関西圏が4517万円で、2001年以降最高額に
調査は、新築マンションの購入契約者を対象に、2019年1月~12月に集計した、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県:4931件)と関西圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県:1024件)の結果をまとめたもの。
新築マンションの平均購入価格は、首都圏が5517万円で2018年より115万円増加した。また、関西圏は4517万円で2018年より179万円増加した。いずれも5000万円以上のシェアが増えたことによるもので、2001年の調査以降で最も高くなった。
平均購入価格が高くなったためか、ローンの借入総額も増加している。首都圏では平均4791万円(前年より98万円増)、関西圏では平均3993万円(前年より233万円増)となり、2005年以降で最も高い額となった。
一方、平均専有面積を見ると、首都圏では68.2平米、関西圏では71.5平米となり、いずれも2001年以降で最も小さくなった。価格の上昇局面では専有面積を小さくして販売価格を抑える傾向が生まれるが、調査結果にもそれが表れている。
共働き比率がこれまでで最高。世帯総年収にも影響
「購入価格の増加」→「住宅ローンの借入総額の増加」を支えているのは、共働き比率の上昇だ。首都圏では、全体に占める共働き世帯の割合は59%、既婚世帯(シングル世帯やその他・不明を除く)で見ると68%に達した。また関西圏では、全体に占める共働き世帯の割合は54%、既婚世帯で見ると65%に達した。いずれも、2001年以降で最も高い割合となっている。
共働き世帯が増えることは、世帯総年収が上がることにつながる。世帯総年収の全体の平均額は、首都圏で988万円、関西圏で814万円であるが、共働き世帯に注目すると平均額は上がる。
○既婚世帯の共働きの有無による平均世帯総年収
首都圏:既婚・共働き世帯 平均1038万円、既婚・共働きでない世帯 平均945万円
関西圏:既婚・共働き世帯 平均849万円、既婚・共働きでない世帯 平均789万円
「価格」と肩を並べた項目は?
夫婦それぞれに収入があることを前提にマンションを購入するとなると、購入後も共働きを継続する意思があるということになる。となると、住まい選びの考え方にも変化が生まれる。
「物件を検討するうえで重視した項目」について聞くと、“ない袖は振れぬ”ので、常に「価格」がTOPに上がるものだ。それが、2019年の調査では「最寄駅からの時間」が「価格」に肩を並べる結果となった。首都圏では、「価格」が89.1%と1位を保っているが、2位の「最寄駅からの時間」が85.7%と肉薄している。関西圏に至っては、「最寄駅からの時間」が86.0%、「価格」が85.8%と、僅差ながら順位が逆転している。
何を重視してマンションを購入するかは、社会情勢などを反映している。リーマンショック後の2009年契約者調査では、「価格」を重視する比率は、首都圏で95.2%、関西圏で93.5%と極めて高い比率を占めた。企業の業績が悪化し、年収が抑えられた時期ということがあるのだろう。
10年後の2019年の調査では、夫婦が共に通勤することの影響もあるのだろうが、「最寄駅からの時間」も重視するようになった。加えて、駅からの所要時間が短い新築マンションの供給が増えている。東京カンテイの『マンションデータ白書2019』から「新築マンションの徒歩時間別供給シェア(駅徒歩物件のみ集計)」を見ると、首都圏では「3分以内」が22.0%、「4~7分」が35.0%、近畿圏では「3分以内」が28.5%、「4~7分」が34.7%と、6割近くが駅に近い場所で供給されたことが分かる。
さて、調査結果を見てきたように、共働き世帯の増加が新築マンションの購入にも大きな影響を与えている。共働きを前提とした世帯総年収で、マイホームを取得する家庭も多いだろう。そうした家庭では、共働きができないと住宅ローンの返済に影響する。今求められるのは、安心して共働きが続けられる社会環境をつくることだろう。