「首都圏賃貸マンション賃料相場マップ2023年版」が完成/長谷工ライブネット
首都圏でファミリー向け賃貸マンションの需要が高まる!?
「首都圏賃貸マンション賃料相場マップ 2023 年版」は、間取りタイプをシングル(25平米)・コンパクト(40平米)・ファミリー(60平米)の 3タイプに分類し、沿線・駅別の賃料相場を同社独自の分析調査によりまとめたもの(対象:95沿線、延べ1,030駅)
タイプ別の賃料相場について、前年との比較で駅別に変動率を算出してまとめた結果、首都圏全体では「上昇」(やや上昇・上昇・大幅上昇)の割合がシングル37%、コンパクト47%、ファミリー51%を占め、面積が広いタイプほど上昇の割合が高い結果になった。なかでも埼玉県と千葉県では、ファミリータイプで「大幅上昇」(グラフの赤い帯部分)が20%を超えるなど、大幅上昇が目立つ。
エリア別・タイプ別で見ると状況はそれぞれ異なるので、詳しく見ていこう。
東京23区では、シングル、コンパクト、ファミリーともに低下(やや低下・低下)よりも上昇の割合のほうが大きく、なかでもファミリータイプでの上昇傾向が大きいという点で、首都圏全体と同じ傾向にある。
東京都下のシングルだけは、低下の割合のほうが上昇より大きいのが特徴だ。が、都下でもファミリータイプでは上昇傾向が見られる。神奈川県は、首都圏のなかでは他のエリアよりは変動が小さい。
埼玉県と千葉県では、コンパクトタイプの上昇割合が最も大きいのが特徴。シングルタイプの上昇割合も、他の都県より大きいが、ファミリータイプについては「大幅上昇」の割合が大きいのが目立つ。このことから、埼玉県と千葉県は賃貸相場が上昇傾向にあるが、特にファミリータイプが特定のエリアで大幅に上昇していると推測できる。
国分寺、さいたま新都心、千葉中央のファミリータイプ賃料が大幅上昇
次に、エリア別に賃料のランキング1位を紹介しよう。
■エリア別賃料相場ランキング(1位を抜粋)
●東京23区 シングルタイプ(25平米) |
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表参道(東京メトロ) | 147,000円 |
コンパクトタイプ(40平米) | |
神谷町(東京メトロ) | 265,000円 |
ファミリータイプ(60平米)※同率1位 | |
表参道(東京メトロ) | 379,000円 |
外苑前(東京メトロ) | 379,000円 |
●東京都下 シングルタイプ(25平米) |
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吉祥寺(JR・京王) | 102,000円 |
コンパクトタイプ(40平米) | |
三鷹(JR) | 147,000円 |
ファミリータイプ(60平米) | |
国分寺(JR) | 238,000円 |
●神奈川県 シングルタイプ(25平米) |
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武蔵小杉(JR・東急) | 103,000円 |
コンパクトタイプ(40平米) | |
馬車道(みなとみらい) | 155,000円 |
ファミリータイプ(60平米) | |
馬車道(みなとみらい) | 278,000円 |
●埼玉県 シングルタイプ(25平米) |
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川口(JR) | 88,000円 |
コンパクトタイプ(40平米) | |
大宮(JR他) | 129,000円 |
ファミリータイプ(60平米) | |
さいたま新都心(JR) | 235,000円 |
●千葉県 シングルタイプ(25平米) |
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浦安(東京メトロ) | 87,000円 |
コンパクトタイプ(40平米) | |
柏の葉キャンパス(つくばEX) | 127,000円 |
ファミリータイプ(60平米) | |
千葉中央(京成) | 188,000円 |
このなかでも、東京都下の「国分寺」(前年2位)、埼玉県の「さいたま新都心」 (前年2位)、千葉県の「千葉中央」 (前年7位)のファミリータイプが、大幅上昇によってそれぞれ 1 位にランクアップした。この理由として「分譲マンションの一部が賃貸された影響で賃料が大幅上昇した」のだという。
埼玉県と千葉県では、ほかにもファミリータイプで大幅上昇した駅がある。埼玉県では「北浦和」(前年8位→5位)、「所沢」(前年9位→5位)、「和光市」(前年12位→7位)、「与野」(前年14位→9位)、千葉県では「松戸」(前年13位→7位)、「柏」(前年16位→8位)だ。
首都圏のファミリータイプで賃料が上昇する背景は?
筆者は、SUUMOジャーナル1月25日公開の記事で「東京都23区のファミリータイプの賃貸住宅が活況。就業環境や働き方の変化が影響?」を執筆した。このときは、三菱UFJ信託銀行が公表した「2022年度 賃貸住宅市場調査」(2022年秋時点)の結果を参照した。
ファミリータイプについては、東京23区と首都圏(東京23区を除く)は、現状も半年後の予測も稼働率と賃料は好調だった。その理由として、2つの要因を挙げた。
まず、マンションの価格が上昇しているため、購入を考えた場合に手が届きにくいこと。次に、ユーザーの志向が住宅の広さや部屋数を求めるようになったこと。これは在宅勤務やオンライン授業などの影響でおうち時間が長くなったことなどが影響している。その結果、広さと駅からの利便性を求めて、手の届く住まいとして、ファミリータイプの賃貸マンションへの需要が高まったと分析した。
こうした状況は今も継続している。さらに、長谷工ライブネットが指摘した分譲マンションの一部が賃貸されているということも加わって、好立地で手が届きやすい賃料のファミリータイプの需要が高いと見てよいだろう。
さて、近年は首都圏のファミリータイプの賃貸需要が高くなっているが、今後も続くのだろうか?住宅の需要はさまざまな要因で変わる。コロナ禍を経て日常生活が戻りつつあるので、就業状況や収入などが改善される方向に進んでいる。また、テレワークは一定レベルで定着しつつある。一方で、住宅ローンの金利上昇リスクが高まっているので、住宅の購入環境が変わる可能性も考えられる。さらには、感染拡大の可能性がなくなったわけではない。
その時々で、最適の住まいを選ぶということになるので、どういった住まいに需要が高まるかは予測しづらい状況になっている。