災害への備えの基本は火災保険と地震保険
近年、テレビや動画で災害の映像が流れ、胸が痛む機会が多くなった気がする。地球温暖化の影響もあるのだろうが、日本はもともと地震や台風などの被災リスクが高い。そんな日本に住むからには、災害への備えは必須だ。
住宅ローンの災害への備えは、基本は「火災保険」と「地震保険」だ。
住宅ローンを借りる際に、「火災保険」に必ず入らなければならない。ただ、火災保険と言っても、基本となる火災や落雷、爆発、風災、雪やひょうによる損害を補償するだけでなく、水災(台風や豪雨などによる洪水、土砂崩れなど)を補償するタイプもある。補償範囲をどこまで広げるかは加入者が決めることになる。
また、火災保険では補償されない、地震や噴火、津波を補償する「地震保険」は、火災保険に付帯されるもので任意に加入するもの。ただし、地震保険は、被災者の生活の安定を目的とした保険なので、震災後の生活に困らない程度の補償内容となっている。地震による被害を再建できるほどのものではない。
大災害に遭って幸い命は助かったとしても、ローン返済中にマイホームが損壊した場合は、住宅ローンの返済に加えて、家の補修や避難先の確保などさまざまな支出が増える。火災保険・地震保険だけでは補償に限度があるので、それ以外にも備えておく必要がある。
自然災害に被災したときに返済の一部を免除する特約付きの住宅ローンが登場
甚大な被害が増えるなか、被災直後に、被災の程度に応じて一定期間にわたり、住宅ローンの返済を免除する特約を付けた住宅ローンが次々と登場している。
2つの事例を見ていこう。
三井住友銀行の「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン(約定返済保障型)」では、半壊で6回分、大規模半壊で12回分、全壊で24回分の住宅ローンの返済が免除され、罹災証明書提出後に引き落とされた分をまとめて払い戻す仕組みとなっている。この特約を付ける場合は、住宅ローンの金利が0.1%上乗せされる。
新生銀行の「安心パックS」の場合は、「自然災害時債務免除特約」と「コントロール返済」、介護リスクに備える「安心保障付団信」がセットになっている。自然災害時債務免除特約では、三井住友銀行と同様に半壊で6回分、大規模半壊で12回分、全壊で24回分の住宅ローンの返済が免除されるが、銀行に連絡した直後から引き落としが止まり、罹災証明書はそのあとで提出すればよい仕組みとなっている。安心パックSをつける場合は16万2000円の事務取扱手数料が必要だが、金利は変わらない。
いずれの銀行も、新規に住宅ローンを借りる場合に特約をつけることができ、ローン返済中の被災に対して1度限りの免除となる。
また、三井住友銀行では、「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン」で、金利に0.5%上乗せで、地震や噴火、津波で全壊した建物のローン残高の50%相当が免除される「残高保障型」のタイプを選ぶこともできる。
これ以外にも類似の特約を用意している金融機関はあるが、対象となる災害や免除内容、コストなどがそれぞれで異なるので、条件などを詳しく確認してほしい。
自然災害への備えを厚くしたい人は、こうした特約の付けられる住宅ローンを選ぶという選択肢ができたことになる。
なお、もし大規模災害に被災して住宅ローンを抱えて生活に困窮するようなことになった場合は、自己破産を回避し、金融機関に「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(2016年4月より運用)に基づく住宅ローンの免除・減額などを申し出る道もある。
何事もなければ問題なく返済できる住宅ローンであっても、自然災害など自分ではどうしようもない原因で、返済が難しくなる可能性もある。そうしたことにあらかじめ備えておくことが、自然災害の多い日本でマイホームを買う心得だろう。
巨大地震の発生確率が高い現状ではあるが、甚大な自然災害が起きないことを願うばかりだ。