LGBTの住まい探し、不動産オーナーの理解はまだまだ 実態は ?

LGBTの住まい探し、不動産オーナーのホンネは「貸したくない」? 実態は?

(写真/PIXTA)

LGBTという用語が世の中に浸透しつつあるが、いまだマイノリティゆえの偏見や行動への制約を受けることもあるだろう。リクルート住まいカンパニーは、LGBTの当事者にその実態を調査するとともに、不動産オーナーに対してLGBTへの意識調査を実施した。実態を紹介しよう 。
【今週の住活トピック】
リクルート住まいカンパニー/
LGBTの住まい・暮らし実態調査2018
不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018

LGBT当事者のほぼ3割が、住まい探しで困難や居心地の悪さを経験

「LGBT」とは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの総称で、セクシャルマイノリティを表すひとつとされる。

本調査でLGBT当事者に「学校、会社など集団生活の中で、偏見や差別的な言動を受けたことや、差別的な言動に不快感を持ったことはあるか?」を聞いたところ、全体で41.2%が「ある」と回答した。中でも、ゲイの55.1%が最も高かった 。

さらに「住まい探し」について困難や居心地の悪さを経験したことがあるかを、住まい探しを経験した人に聞いたところ、「賃貸住宅探し」で28.7%、「住宅購入」で31.1%が「ある」と回答した。

ちなみに、「現在の住まい」については、「賃貸アパート・マンション」が36.7%で最も多く、持ち家の比率は31.2%(一戸建て22.1%+マンション9.1%)だった。

現在のお住まい(単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「LGBTの住まい・暮らし実態調査2018」)

現在のお住まい(単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「LGBTの住まい・暮らし実態調査2018」)

LGBTに向けた自治体の施策や住宅ローン商品も出始めた

LGBTが住まい探しで困難になる理由はいくつかある。

「賃貸住宅」では、貸主と賃貸借契約を結ぶ際にあらかじめ同居人を認めてもらう必要があるが、家族として同性パートナーが認められるケースは少ない。認められる賃貸住宅を探すか、ルームシェア可の物件を探すか、といったことになってしまう。

また、「住宅購入」に関しては、異性のパートナーであれば、二人の収入を合わせて一緒に住宅ローンを組むか、二人それぞれでローンを組む「ペアローン」が可能だ。しかし同性パートナー同士で住宅を購入しようとした場合には、いずれの組み方も認められないケースが多いのが現状。かといって1人でローンを組んでしまうと「万が一のときに残されたパートナーが住み続けられるのか」といった不安もつきまとう。

こうした不平等を無くしていこうと、同性カップルのパートナーシップを証明する自治体も現れた。
筆者は2015年4月8日のSUUMOジャーナルの記事で「渋谷区の同性カップル条例が成立。なぜ賃貸住宅が借りづらい?」を執筆した。渋谷区の「同性カップル条例」が成立し、手続きを取ればいわゆる「パートナーシップ証明」が発行されるようになり、賃貸住宅を探す際に、同性カップルの同居を認めやすくなると注目されたからだ。

これ以降も、世田谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市、札幌市などの自治体で「パートナーシップ証明書」や「パートナーシップ宣誓書受領証」などを発行するようになった。こうして、一部の自治体でセクシャルマイノリティへの不平等を無くしていこうと動き出している。

また、楽天銀行やみずほ銀行、三井住友信託銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行などの銀行で、住宅ローンでペアローンや収入合算(同居親族の収入を借入者の収入と合算すること)、担保提供などができる “配偶者”の定義に、同性パートナーを加えるなどの商品改定を行った。銀行によって細かい条件などが異なるので、詳細は個別に確認をしてほしい。

LGBT当事者にこうした状況の認知度を聞いたところ、「同性カップルのパートナーシップ登録や証明書発行を行う自治体があること」の認知度が53.6%と過半数を超えたが、「同性カップルが共同で組める住宅ローン商品があること」への認知度は26.8%だった。

LGBTを応援したいという不動産オーナーは4割弱

このように、一部の自治体や金融機関では多様なパートナーシップのあり方を認めていこうという動きがあるものの、不動産の現場ではどこまで浸透しているのだろうか。

賃貸住宅の貸主である、不動産オーナーにLGBTへの意識について調査した結果を見ていこう。
同性カップルの入居を断った経験があるかどうか(入居希望を受けたことがあるオーナーが対象)については、「男性同士の同性カップル」の場合で8.3%、「女性同士の同性カップル」の場合で5.7%だった。なお、入居を断った割合が高かったのは、「ルームシェア(男性同士)」の8.2%、「同性愛者(女性)」の7.8%など。同性カップルに限らず、賃貸住宅の入居に困難が伴う実態を浮き彫りにしている。

これまでの入居希望者への対応(入居希望を受けたことがある人を対象・単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018」)

これまでの入居希望者への対応(入居希望を受けたことがある人を対象・単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018」)

また、不動産オーナー全員に今後の入居希望者の対応意向を聞いたところ、「男性同士」の同性カップルの入居希望に対して「特に気にせず入居を許可する」という回答は36.7%、「女性同士」の同性カップルの入居希望に対して「特に気にせず入居を許可する」という回答は39.3%などと、厳しい結果となった。

今後の入居希望者への対応意向(単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018」)

今後の入居希望者への対応意向(単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018」)

調査結果を見ていくと、生活の拠点となる大切な住まい選びにおいて、LGBTへの偏見や差別的な行動がまだ多いことが分かる。とはいえ、不動産オーナーの中でも30代など若い世代ほど「応援したい」と回答するなど、認識が変わっていく状況も見られた。まずは、LGBTに対して適切な認識を持つことが重要だ。

今の社会の中で、LGBTであるとカミングアウトすることは勇気のいることだろう。カミングアウトした当事者をフレンドリーに受け入れる社会であってほしいと望む。

引用元: suumo.jp/journal