「首都圏不動産流通市場の動向(2018年)」を公表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)
中古マンションの成約件数は前年から微減ながら横ばい、価格は6年連続で上昇
東日本レインズの2018年のデータによると、首都圏で売買が成立した中古マンションの成約件数は、3万7217件で4年ぶりに前年をわずかに下回った(0.3%減)ものの、3年連続で3万7千件台前半の高水準を維持している。
一方、成約物件の1平米当たり単価は首都圏平均で51.61万円(前年比3.2%上昇)で、6年連続で上昇した。成約物件の首都圏平均価格は3333万円(前年比4.3%上昇)で、こちらも6年連続で上昇した。平均面積は64.6平米、平均築年数は21.0年だった。
価格についてさらに詳しく見ていこう。
中古マンションの価格帯別成約件数の推移を見ると、3000万円以下の成約件数や成約シェアが減っているのに対して、3000万円を超える価格帯では、5000万円以下、7000万円以下、1億以下、1億超のいずれもが成約件数、シェアともに増えている。
中古マンションの平均単価の上昇については、中古市場の活況を受けて、市場に出回るマンションの値付けを上げているという見方もできるが、同時に、価格の高い(条件のよい)中古マンションの成約が増えているという見方もできそうだ。
首都圏の中古マンション市況は、新築マンションと比べてどうだった?
では、同じ首都圏の2018年について、新築マンションの市況はどうだったのだろうか?
調査方法も調査対象も大きく異なるのだが、不動産経済研究所が公表した「首都圏マンション市場動向2018年(年間のまとめ)」を見てみよう。
このデータによると、2018年の供給戸数は前年より3.4%増の3万7132戸。首都圏では、中古マンションと同じ程度の供給があったことになる。
一方、1平米当たりの単価は86.9万円(1.2%増)、平均価格は5871万円(0.6%減)。中古マンションの価格が上昇トレンドだったことと比べると、新築は横ばいだったことが分かる。
価格については増減の状況だけを見ると、首都圏では、中古マンションが上昇、新築マンションが横ばいということなるが、果たしてそう単純に見てよいのだろうか?
首都圏のマンション市況の「平米単価」の推移を比べてみよう。
○首都圏の中古マンションと新築マンションの平米単価(万円)の推移
中古(※1) 新築(※2)
・2014年 42.50 71.1
・2015年 45.25 77.9
・2016年 47.92 79.3
・2017年 50.00 85.9
・2018年 51.61 86.9
※1:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2018年)」
※2:不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向2018年(年間のまとめ)」
2014年から2018年の5年間の上昇率を見ると、中古マンションで21%、新築マンションで22%と同じような上昇率を示している。半面、平均平米単価の差を見ると、2014年では28.6万円だったものが、2018年では35.3万円と差が開き、中古マンションの価格は上昇しているものの、新築との比較で割安な感じを受ける市況だったと言えるだろう。
調査手法が異なるので、このように単純に比較するのは適切ではないのだが、新築マンションの価格は高止まりの状態に入り、一般的なサラリーマンが購入するには手が届きにくい価格帯にある。そのため、4000万円台以上などの予算の高い層が、立地や広さなどの条件を考慮して、中古マンションを購入したという状況だったと見てよいだろう。
さて、2019年については、新築マンションの供給量や価格などの市況は、2018年とあまり変わらないと見られている。一方で、10月に消費税率10%への引き上げが予定されている。政府は、消費税の増税の影響を緩和する住宅ローン減税の拡充や次世代住宅ポイント制度の創設など、住宅購入に関する優遇策を打ち出している。
一方、宅建業者がリフォームした上で販売する中古マンションを除き、個人が売り主となる中古マンションは消費税の課税対象外なので、こうした優遇策は受けられない(性能を引き上げるリフォームをする場合は適用される場合がある)。
こうした違いもあるので、増税の前後でマンション購入層がどう動くかによって、市況も大きく変わってくるだろう。目が離せない一年になりそうだ。