住まいに関する支出は、家庭の大きな割合を占めるもの。保活から住宅ローン控除まで、住まいに関する家計管理や節約術に定評のあるファイナンシャルプランナー(FP)の花輪陽子さんが解説します。
住宅ローンの基本の3タイプの特徴を押さえよう!
では、いったいどうやって住宅ローンの金利タイプを選んだらよいのでしょうか。
まず、住宅ローンの基本の3種類の特徴を押さえましょう。それぞれメリット・デメリットがあります。金利落下局面では変動金利型が有利になりますが、これから金利が上昇するかもしれないというときには固定金利型のほうが有利になります。
【変動金利型】
特徴:市場金利の変化によって住宅ローン金利も変動する。半年ごとに金利の見直しがあるのが一般的
メリット:固定金利型より金利が低い
デメリット:住宅ローン返済額の見直しは通常5年ごとのため、金利上昇局面では金利の変化に気付きにくい
【全期間固定金利型】
特徴:借りている間ずっと金利が一定
メリット:あらかじめ金利が決まっているために将来の資金繰りを見通しやすい。金利上昇局面では金利上昇リスクを防ぐ効果がある
デメリット:金利は変動金利型よりやや高め
【固定金利選択型】
特徴:一定期間(3年、5年、7年、10年、15年など)は固定金利で、固定期間終了後は変動金利にするか固定金利にするか選択できるのが一般的
メリット:住宅ローンを借り入れた当初の残債が多いときに、一定期間金利を固定にすることができる
デメリット: 3年や5年など期間が短い固定金利選択型を選択する場合、残債が思うように減らないこともある
変動で借りて、金利が上がってきたら固定に切り替えればいいのではという意見もよく聞きます。ですが、景気動向が金利に反映されるのは固定金利のほうが早いのです。金利が上がってきたのでは?と思ってから切り替えても、すでに固定金利が上がっている可能性もあるので注意が必要です。金利が低い時期に、最初から10年以上の長期の固定金利選択型にしておけば安心です。
変動金利の場合、金利上昇リスクを考えて
2007年末から2009年ごろにアメリカでサブプライム住宅ローン危機が起こりました。この危機は金利が上昇し、住宅価格が下落を始めたことが発端でした。金利が上昇した結果、負担が大きくなり、返済が滞る家庭が増えました。
住宅価格が下落した際に、多額のローンが残っているとローンの借り換えも厳しくなります。サブプライム住宅ローン危機は今や一昔前のことなので、知らない人や忘れてしまった人もいるかもしれませんが、他人事ではありません。歴史からしっかりと学ぶようにしたいですね。
全期間固定金利型に抵抗がある場合は、10年固定金利などにするのも一つの手です。借入額の大きい10年間、固定金利にしておけば仮に市場金利が上がってしまった場合でもその期間は返済額が変わらないからです。10年の間に一生懸命返して住宅ローンを小さくしてしまえば、借り換えのときにたとえ金利が上がったとしてもそれほど怖くはなくなります。
低金利ゆえの“借り過ぎ”に要注意!
一番よくないのは低金利だからと、返済できるギリギリまで借り過ぎることです。住宅ローンの返済額は手取り月収の30%程度までに留めましょう。そうしなければ、教育費や老後資金を貯めながら他の支出のやりくりをするのが難しくなるからです。一定額の貯金があり、いざというときには繰上げ返済ができる人を除いては全額を変動金利で借りないことをお勧めします。なぜなら、将来的に金利が上昇したら、返済額が増える可能性もあるからです。変動金利だけではなく、3年などの短期間の固定金利選択型も同じことが言えます。
現在は金利が低いので住宅ローンのハードルが低いように錯覚してしまい、大きな額を借りがちです。しかし、金利が上がった場合、返済が厳しくなるので借り過ぎない。リスクヘッジのためには、変動金利型と固定金利選択型を組み合わせる技も身に付けることが大切です。住宅ローンを選ぶ際には、目先の金利の低さだけではなく、「低い金利が何年続くのか」が大切。長期的な視点をもちましょう。
花輪 陽子(ファイナンシャルプランナー)
CFP認定者、1級FP技能士。外資系投資銀行を経てFPに。「夫婦で貯める1億円!」「貯金ゼロ 借金200万円!ダメダメOLが資産1500万円を作るまで」などの著書やテレビ出演、雑誌監修など多数。
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