住宅ローン減税、2022年以降どうなる? これから家を買う人が知るべきポ…

2022年以降の住宅ローン減税をわかりやすく解説してみた

(写真/PIXTA)

与党の「税制改正大綱」が決定し、住宅ローン減税の控除率引き下げが確実となった。控除率の引き下げは、以前より会計検査院の指摘を受けていたことによるもの。控除率1%では、住宅ローンの金利で0.4%台のものもあるので、利息分より多く還付しているいわゆる「逆ザヤ」となっていたからだ。今後の住宅ローン減税について詳しく解説していこう。
【今週の住活トピック】
政府与党が「令和4年度税制改正大綱」を決定

現行の住宅ローン減税をおさらい

2022年度からどうなるかの前に、まずは今適用されている住宅ローン減税の概要を確認しておこう。

現行の住宅ローン減税の概要(筆者作成) ※控除額全額を所得税から引き切れなかった場合は、住民税からも一部控除される

現行の住宅ローン減税の概要(筆者作成)
※控除額全額を所得税から引き切れなかった場合は、住民税からも一部控除される

現行の住宅ローン減税は、控除期間が原則10年間だ。消費税増税による緩和策として、10年間+3年間の特例が適用されていた。

なお、ここでいう「中古住宅」は、売主が個人である場合だ。売主が個人の場合は消費税がかからないのだが、不動産会社などの法人が売主で中古住宅をリノベーションして販売している場合は、建物価格に消費税が課税されるので「消費税10%適用物件」に該当する。また、「認定住宅」の場合、上記の表のローン限度額に1000万円上乗せされることで、最大控除額が100万円多くなる。この「認定住宅」と認められるためには長期優良住宅や低炭素住宅など所定の条件をクリアする必要がある。

2022年からの住宅ローン減税はどう変わる?

では、与党の税制改正大綱では、住宅ローン減税はどう変わると言っているのだろうか?

令和4年度税制改正大綱の住宅ローン減税の概要※控除額全額を所得税から引き切れなかった場合は、住民税からも一部控除される(筆者作成)

令和4年度税制改正大綱の住宅ローン減税の概要(筆者作成)
※控除額全額を所得税から引き切れなかった場合は、住民税からも一部控除される

会計検査院から指摘されていた「控除率」は一律0.7%になった。新築住宅については、その分「控除期間」を原則13年間にしている。また、控除の対象となる「ローン限度額」が、居住年が2022・2023年の場合よりも2024・2025年のほうが段階的に縮小されるようになっている。

そして今回最も注目したいのは、住宅の省エネ性能によって、住宅ローン減税の恩恵が変わってくることだ。政府は「2050年カーボンニュートラル」を提唱し、脱炭素化に力を入れている。住宅ローン減税を活用して、住宅の省エネ性を引き上げようという考えだ。

カギになるのが「認定住宅等」の中身だ。具体的には、次のような区分けになっている。

令和4年度税制改正大綱の住宅ローン減税で認定住宅の場合(筆者作成)

令和4年度税制改正大綱の住宅ローン減税で認定住宅の場合(筆者作成)

最も優遇されるのが、「認定住宅」だ。これは現行の認定住宅と同様に、長期優良住宅や低炭素住宅に認定されたものになる。高い性能が求められるので、いずれもさまざまな減税等の優遇措置が受けられるものだ。

次に優遇される「ZEH水準省エネ住宅」とは、ZEH並みの省エネ性能等を有する住宅が該当する。「ZEH(ゼッチ)」とは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略したもので、住宅の断熱性・省エネ性能を上げることに加え、太陽光発電などによってエネルギーを創り、年間の「一次エネルギー消費量の収支」がゼロ以下の住宅。ZEH水準省エネ住宅は、住宅の断熱性・省エネ性能がこのZEHの水準を満たすものを指し、太陽光発電設備の設置の有無は問われない。

最後の「省エネ基準適合住宅」は、現行の建築物省エネ法の平成28年(2016年)基準が該当する。近年では新築住宅全体の8割、なかでも新築一戸建ての9割がこの基準を満たしていると言われている。ただし現時点では、新築住宅に適合義務は課されていないので、新築住宅がすべて適合住宅に該当するわけではない。2025年度までに、すべての住宅で省エネ基準適合を義務化する見通しとなっている。

したがって、これらの省エネ性の条件を満たさない場合は、新築も中古も「それ以外」の控除額となる。加えて、税制改正大綱には、2024年以降に建築確認を受ける新築住宅などで、一定の省エネ基準を満たさない場合は、住宅ローン減税の適用対象外になるという記載がある。つまり、2024・2025年に居住開始する新築住宅でも、省エネ性によっては住宅ローン減税が受けられない可能性があるので、注意したい。

なお、不動産会社などが買い取った中古住宅をリフォームして、売主として販売する場合で、一定レベルのリフォームをしたものは、新築住宅と同額の控除額となる。

対象者の所得要件や中古住宅の築年数要件なども変わる

これまで大きな変更点を中心に紹介してきたが、このほかにもいくつか変更点がある。

(1)対象者の所得要件の引き下げ
これまでは、住宅ローン減税を受けるには、ローンを借りた人の合計所得が3000万円以下という要件があった。2022年1月1日以降に居住開始した場合は、これを2000万円に引き下げるとしている。

(2)中古住宅の築年数要件を撤廃
これまでは、中古住宅の場合に、「木造住宅は築20年以内、耐火構造(いわゆる鉄筋コンクリート造りのマンション)は築25年以内」といった要件があった。この築年数要件が撤廃される。代わりに「登記簿上の建築日付で昭和57年1月1日以降の住宅」(いわゆる新耐震基準)といった条件が加わることになる。

(3)住宅の床面積の一部緩和
住宅ローン減税が受けられる住宅には、「床面積が50平方メートル以上」という要件がある。が、現行の住宅ローン減税でも、13年間控除の対象の場合で合計所得が1000万円以下の年は、「床面積40平方メートル以上」でも適用されるようになっている。今回の税制改正大綱でも、2023年12月末までに建築確認を受けた新築住宅は、床面積40平方メートル以上で適用されることとしている。

税制改正大綱は、今後の国会で関連税制法案が成立することが前提となる。また、住宅ローン減税にはここに記載した以外のさまざまな要件があるうえ、関連税制法案で詳しい条件が追加されることもあるので、詳細が確定したら十分に確認をしてほしい。

これからは、省エネ性の低い住宅には減税などの恩恵を与えない、という政府の動きが見えるので、住宅を建てたり買ったりする際には、省エネ性能について関心を高めてほしい。

引用元: suumo.jp/journal