過労自殺、ポケモン、保育園落ちた、106万円の壁……大きな話題に関する決断が並ぶ
All Aboutの「国民の決断」とは、その年に身の回りで特徴的だったと思われる“コト”とそれに関する人々の“決断”をランキングしたもの。8部門でそれぞれ3位までの決断が選ばれ、各部門の1位による総合ランキングを発表している。
●「国民の決断2016」総合ランキング
1位:うつは誰でもなる病気~社会がうつと向き合う決断(健康部門)
2位:功罪入り混じるマイナス金利~住宅ローンを借り換える決断(マネー部門)
3位:住宅診断が法制化~中古にも安心を求める決断(住まい部門)
4位:「保育園落ちたの私だ!」~ワーママが声をあげる決断(妊娠・出産部門)
5位:遺骨は海へ、大地へ、空へ~墓を持たない決断(老後部門)
6位:一億総トレーナー化~ポケモンを探す決断(消費・購買部門)
7位:私、どこまで頑張る?~「壁」を前にした働く女性の決断(働く・学ぶ部門)
8位:お互いが人生をより楽しむために~離婚より卒婚する決断(結婚・離婚・再婚部門)
(出典:All About「国民の決断2016」)
詳しい内容はオールアバウトの資料に委ねるが、ランキングに挙がった決断は、いずれも大きな話題になったものが多い。「ポケモンGO」や「保育園落ちた日本死ね」、パート・アルバイトの「106万円の壁」などはもちろん、散骨や墓じまいなどもニュースなどで多く取り上げられた。
そんななかで、「社会がうつと向き合う決断」が1位になった理由を、オールアバウトの広報に聞いてみた。「『大手広告代理店での自殺』が大きな話題になったことに加え、調べたところ“うつ”は職場で受けるストレス以外に、介護や出産など多様な局面のストレスが引き金になることが分かり、社会的に大きな問題ととらえた」からだという。
また、住まいに関する決断では、2位の「住宅ローンの借り換え」(マネー部門)も注目したい。日本銀行のマイナス金利政策で、住宅ローンはかつてない低金利となり、いち早く低金利の恩恵を受けられる借り換えが増加した一年だった。
住まい部門の注目は、中古住宅の品質向上に対する期待?
さて、住まい部門について詳しく見ていくと、1位~3位は以下の決断だった。
●「国民の決断2016」住まい部門ランキング
1位 住宅診断が法制化~中古にも安心を求める決断
2位 人口減少・少子高齢化に向き合うために~価値ある街へ縮小する決断
3位 あなたと一緒に住みたいにゃ~ネコと住む決断
(出典:All About「国民の決断2016」)
1位と2位は、政府が力を入れている政策と関係する。
住宅の量については充足しているので、既存の住宅の質の向上に政府は舵を切っている。質の向上のためには、住宅の現況の品質に関する情報を細かく提供する「インスペクション=住宅診断」や品質を向上させるリフォームの促進が鍵となる。政府は、中古住宅のリフォームに関する優遇税制を充実させたり、インスペクションやエコリフォーム・エコ住宅の建て替え等に補助金を出す「住宅ストック循環支援事業」などを実施している。
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さらにインスペクションについては、宅建業法が改正され、2018年4月から宅地建物取引業者には、仲介業務の委託を受けて媒介契約を交わす際にインスペクション事業者のあっせんの可否を明示すること、インスペクションを行った住宅を売買する際にインスペクションの結果を買主に説明することなどが義務付けられるようになる。
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今後も、住宅の品質に関する情報のオープン化、インスペクションや住宅診断と保証がセットになった「瑕疵保険(かしほけん)」の普及、リフォームの促進などにはいろいろな手を打っていくので、国民が中古に安心を求める決断もますます強まっていくだろう。
2位は、政府が地方都市で促進している「コンパクトシティ構想」がかかわる。住宅と公共施設、医療福祉施設、商業施設などを駅周辺などに集約することで、効率的な行政サービスや生活支援を行っていこうというもの。ただ、国民というよりは地方自治体の決断のようにも思う。
3位は、以前から話題になっていたペットとの暮らしだが、特に犬人気を上回ろうとしているネコに注目した点が2016年らしいのだろう。ただし、ペット飼育の問題はすでに、飼い主とペットの高齢化の問題にまで発展している。ペットを飼いやすい住まいを選ぶだけでなく、最後まで世話をし続ける決断にも期待したい。
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住まいの未来予測は民泊。2016年の決断でない理由は?
今回の「国民の決断2016」では、これから各部門で変革をもたらすだろうコトを未来予測している。
●「国民の決断2016」番外編【未来予測トピックス】
・健康部門:人工知能で医療ビックバン
・マネー部門:控除パニック
・住まい部門:みんなが民泊
・妊娠・出産部門:ワーク・バース・バランス
・老後部門:ごちゃまぜコミュニティへの移住
・消費・購買部門:VR≒バーチャル・リア充
・働く・学ぶ部門:習い事はプログラミング
・結婚・離婚・再婚部門:断然円滑「婚前契約」
住まい部門では、「みんなが民泊」が挙がった。
民泊は、2016年の新語・流行語大賞にもノミネートされ、大いに話題となった。民泊を促進する法整備に着手され、民泊保険などさまざまな業界で新しいサービスも登場するなど注目を集める一方で、無許可営業の民泊が近隣迷惑になるなどの問題点も露呈した。
推測となるが、2016の決断に入っていないのは、「簡易宿舎」としての設計設備を備えていなければならないこと、規制が緩和される経済特区でも宿泊日数などの条件があることなど、一般の人が民泊を行おうとしようとする場合にハードルが高すぎる現状があるのだろう。ホームスティ型のルールが整備され、一般の人でも民泊をしやすくなることを期待しての未来予測ではないか。
さて、筆者が考える2016年の国民の決断としては、「タワーマンションを買う決断」を挙げたい。
節税対策として富裕層がタワーマンションの高層階を買う事例が増加する一方、政府が売買の価格差に応じた負担を求める税制改正案を考えていたり、低層階と高層階の居住者間でフロア差別が生まれているといったことが指摘されたりと、話題を集めた年でもあった。
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次に未来予測だが、「住まいにかける保険」というのもあるかもしれない。2017年1月から地震保険料が改定されたことで加入率に変化が見られたり、水害を補償する火災保険の需要が高まったり、政府が勧める瑕疵保険の加入が進んだりといった変化が見られるのではないかと考えている。
また、審議が遅れていた「民法改正」について、2017年には成立するのではないかと予想している。瑕疵という概念がなくなることで契約の重要性が高まるなど、大きな変革となる法改正だけに、注目したい点だ。
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