コロナ影響で民泊の廃止届出が増加!?民泊はどうなっていくのか?

コロナ影響で民泊の廃止届出が増加!?民泊はどうなっていくのか?

(写真提供:PIXTA)

コロナ禍で外国からの観光客が激減している。国内の外出自粛もあって、観光地やビジネス街の宿泊施設は打撃を受けた。一方で、GOTOトラベルで国内の観光客が戻りつつある。そんななか、観光庁が民泊についてある調査をした。その調査結果は……。
【今週の住活トピック】
「住宅宿泊事業の廃止理由調査について」を公表/観光庁

コロナ禍でも民泊の届け出は継続しているが、廃止届も増加

2018年6月15日に住宅宿泊事業法(いわゆる「民泊新法」)が施行されて以降、住宅宿泊事業者は届け出をすれば、民泊を行えるようになった。では、現状はどうなっているのだろうか?

住宅宿泊事業届出の現状を見る(画像1)と、2020年10月7日時点の届出件数(赤線)は2万7484件。法施行日の約12.4倍にまでになった。コロナ禍においても、民泊を営業する旨の届け出が継続してなされていることが分かる。

その一方で、事業の廃止件数(青線)は新型コロナウイルスの感染拡大のころから増加している。その結果、届出住宅数(緑線)は4月10日の調査数をピークに減少傾向にある。2020年10月7日時点で事業廃止件数は7292件に達し、届出住宅数は2万192件となった。

住宅宿泊事業届出住宅数等推移(出典:観光庁「民泊制度ポータルサイト」より転載)

住宅宿泊事業届出住宅数等推移(出典:観光庁「民泊制度ポータルサイト」より転載)

新型コロナウイルスの影響で「収益が見込めない」が最多

住宅宿泊事業の廃止件数が増加していることを受けて、観光庁では、事業の廃止理由について調査を行った。その結果を見る(画像2)と、廃止の理由で最も多かったのは「収益が見込めないため」の49.1%で、前年調査の7.2%と比べると、大幅に増加したことが分かる。

廃止理由の中でも「新型コロナウイルス関連」(赤色)で見ると、「収益が見込めないため」が最多で、この回答の94.4%を占めるほどだ。

住宅宿泊事業廃止の理由 ※複数回答あり(出典:観光庁「住宅宿泊事業の廃止理由調査」より転載)

住宅宿泊事業廃止の理由 ※複数回答あり(出典:観光庁「住宅宿泊事業の廃止理由調査」より転載)

収益が見込めない理由は、やはり宿泊客の減少だろう。観光客の減少に加え、出張の抑制なども影響して、開店休業状態になったところも多いことだろう。「事業は完全に廃業」の回答が増えていることからも、収益が見込めずに完全に撤退する構図が浮かび上がる。

一方で、何らかの形で事業を継続しようという動きもうかがえる。「旅館業または特区民泊へ転用するため」と「他の用途へ転用するため」に注目したい。

「旅館業または特区民泊へ転用するため」については、これまでは廃止の最大理由だった。今回は、前年と比べると比率は大きく減っているが、実数としては2番目に多いことから、相応の動きがあると見てよいだろう。また、「他の用途へ転用するため」の回答は、今回はコロナの影響もあって増えている。民泊新法による民泊ではなく、特区民泊や旅館業、その他の業態で何らかの事業を継続しようという動きが見て取れる。

一部に業態を変えて事業を継続する動きも?

ここで、民泊について確認しておこう。そもそも「民泊」は、「旅館業」や「特区民泊」とどう違うのだろうか。

民泊新法が施行される前は、旅館業法上の「簡易宿所」の許可を得るか、国家戦略特区で認められた自治体の民泊の条例に則る(いわゆる特区民泊)か、という選択肢しかなかった。旅館業法では宿泊者の安全確保のためなどの建築上の制限が厳しく、一般的な住宅ではハードルが高いうえに、特区民泊も該当する自治体が限られるため、違法に民泊を行う事業者が多かった。

一般的な住宅でも民泊をやりやすいようにと生み出されたのが「民泊新法」だ。ただし、旅館業や賃貸業を脅かさないようにと、年間180日を超える営業はできないという制限が付いた。宿泊客が見込める場合は、この「180日規制」が収益にはマイナスに影響してくる。

住宅を改修することなどで旅館業法が適用されるようになれば、365日営業ができるようになる。特区民泊も自治体ごとの条例に従う必要があるが、365日営業が可能だ。このために、これまでは旅館業や特区民泊への転換を図るために、民泊新法による民泊の廃止届を出す事例が多かった。コロナ禍においても、GOTOトラベルなどで観光客が戻ってきた地域であれば、いつでも営業できるようにしたいと転換に動いたことが推測できる。

かたや、コロナ禍で生活様式が著しく変化した。テレワークが急速に広がり、オフィス以外の場所で仕事をしたり、通勤せざるを得ない業種の働き手が自宅以外で寝泊まりしたりといった事例も見られた。こうした変化のなかで、民泊用の住宅をコワーキングスペースにしたり、家具付きのマンスリー賃貸にしたりといった、業態を転換する動きもあると考えられる。

調査結果の事業廃止は、あくまで民泊新法による民泊を廃止する届け出だ。コロナ禍で、事業自体を完全に止めた場合が多いだろうが、何らかの形で事業を継続しようという事例もあるのだろう。

せっかく日本に根付いた民泊ビジネスなので、日本らしいおもてなしの場として育ってほしいと思うが、新型コロナウイルスの影響で収益が見込めなくなるのは残念でならない。知恵を絞って、何とか頑張ってもらいたいものだ。

引用元: suumo.jp/journal