【新型コロナ影響】住宅ローンが払えなくなった人への救済策は?

【新型コロナ影響】住宅ローンが払えなくなった人への救済策は?

(写真/PIXTA)

新型コロナウイルスは人命をむしばむだけでなく、家計をもむしばんでいる。休業や営業不振で、職を失ったり大幅に収入が減ったりという人もいるだろう。なかには収入が減って、住宅ローンの返済に困るという人もいるだろう。その場合はどうしたらよいのだろう?

【フラット35】利用者には返済方法の変更メニューがある

まず【フラット35】の対応策について紹介するのは、公的機関が関与しているローンだからだ。一般の民間金融機関の住宅ローンに比べると、対応策が明確に提示されているという特徴がある。

【フラット35】についておさらいしておこう。住宅金融支援機構と民間金融機関が提携する、返済中は金利が変わらない住宅ローンだ。公的機関がかかわっているローンなので、一定の品質が確保されていると認められた住宅の場合に借りることができる。

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、住宅金融支援機構では、【フラット35】などの機構の住宅ローンについて返済が困難となった人に対して、返済の相談を融資の窓口となる金融機関に相談するように促している。それと合わせて、返済を継続するための返済方法の変更メニューを提示している。

提示されたメニューは3つで、これらを組み合わせることも可能だ。

出典:住宅金融支援機構「新型コロナウイルス感染症の影響により機構の住宅ローンのご返済にお困りの方へのお知らせ」より転載

出典:住宅金融支援機構「新型コロナウイルス感染症の影響により機構の住宅ローンのご返済にお困りの方へのお知らせ」より転載

●返済期間の延長などの返済特例
例えば、住宅ローンを借りたときに35年返済で組んでいて、すでに10年間返済を続けているとする。残りの返済期間は25年となるが、10年延長し、残りの返済期間を35年にすることで、毎月の返済額を引き下げることができる。もちろん、当初より長く返済することになるので、トータルで見ると利息が増えて総返済額は増加する。

この条件(35年返済の10年経過後に35年返済に変更)で例えば、3000万円を2.5%の固定金利で借りていたとすると、毎月の返済額は10万7248円から8万5464円となり、2万円以上減額できる。
※実際の額は、借入額や適用金利、借入期間、経過期間、延長期間によって異なる

さらに、失業や20%以上の減収の場合であれば、元金の支払いを一時休止し、利息のみを支払う期間(最長3年)を設定することが可能で、この期間については大幅に減額が可能となる。

●一定期間だけ返済額を軽減する中ゆとり
例えば、3年間だけ毎月の返済額を減らし、4年後からは減額分も含めて返済していく方法。一定期間後の返済額は当初の返済額よりも増えることになる。

●ボーナス返済の見直し
最近はボーナス時に多額の返済額を設定している人は少ないと思うが、ボーナス時の返済が難しい場合は、その分を毎月返済額に振り分けることも可能だ。

こうしたメニューが用意されているが、適用されるには審査があり、延長できる期間などにも制約がある。希望すれば誰もが適用されるとは限らないが、まずは相談してみることだ。

なお、機構の住宅ローンで別に機構団体信用生命保険の特約料(保険料)の支払いがある場合で、一時的に支払いが困難なときも、払込期限の猶予措置がある。

その他の住宅ローンの返済に困ったら?まずは返済方法の変更を検討

一般的な民間金融機関の住宅ローンでは、機構のような返済変更メニューが明示されていないことがほとんどだ。だからといって、返済方法の変更に全く対応しないわけではない。

各金融機関がそれぞれ、住宅ローンの返済に困る個人向けの相談窓口を設置しているほか、一般社団法人全国銀行協会でも相談窓口やカウンセリングサービスを開設している。
一般社団法人全国銀行協会「新型コロナウイルスへの対応について」

まずは相談窓口で、返済方法の変更などについて相談してみよう。なお、相談するのはできるだけ早いほうがよい。返済に困る状態が続くほど、選択肢が減るからだ。住宅ローン返済の滞納が続いてしまうと、住宅ローンの一括返済を求められる場合もある。とにかく早く相談して、打ち手がないかを一緒に考えてもらうのがよい。

最後は、マイホームを手放すことも選択肢に

機構の【フラット35】であれ、民間金融機関の住宅ローンであれ、返済方法の変更をしてもその後の返済が難しい場合は、マイホームを手放すことも考えざるを得ない。

選択肢の一つが「任意売却」だ。

住宅ローンを借りるときには、金融機関が住宅を担保にしているので、返済不能になると金融機関が強制的に「競売」で売却してローンを回収することになる。そうなる前に、住宅を売却した費用でローンの返済に充てることを金融機関と合意するのが「任意売却」だ。通常の売買に近い形で売却できるので、市場価格に近い額で売却できるなどのメリットがある。

ただし、競売であれ任意売却であれ、売却した資金を充てても住宅ローンが残る場合は、それを返済していくことになる。

また、住宅ローン以外の借金があって住宅ローンの返済に困っているなら、「個人版民事再生」も選択肢となる。

これは個人版民事再生法に基づく方法で、ほかの借金を大幅に減額してもらい、原則として3年間で分割返済するもの。マイホームを手放さずに済むが、住宅ローンが減額されるわけではない。

個人版民事再生を含めて、債務の整理や自己破産などについては、弁護士など法律の専門家に相談する必要がある。無料の問い合わせができる「法テラス」(ただし、新型コロナウイルス感染拡大防止のために業務を縮小中)などを利用することもできる。
法テラス「新型コロナウイルス感染症に関する情報について」

さて、急激な営業不振により突然に収入が減ってしまうと、日々の生活のことで頭がいっぱいになってしまうだろう。だが、住宅ローンの返済については、放っておいて済むものではない。早めに金融機関に相談し、場合によっては弁護士などの知恵も借りて、打ち手を見出すようにしてほしい。

引用元: suumo.jp/journal