「平成30年度マンション総合調査結果」を公表/国土交通省
マンション選びはなにより立地重視?
調査は、管理組合と区分所有者に対してそれぞれ行っているが、区分所有者に対して調査した項目をピックアップしながら、マンションを選ぶ際に何を考慮したのか見ていこう。
まず、マンション購入時に考慮した項目について聞く(複数回答)と、「駅からの距離など交通利便性」が72.6%で最多だった。ほかに上位に挙がった項目を見ると、3番目の「日常の買い物環境」(52.8%)、4番目の「周辺の医療・福祉・教育等の公共公益施設の立地状況」(39.4%)、6番目の「周辺の自然環境」(28.5%)と、立地に関する項目が上位に多いことが分かる。
住宅の基本性能より立地条件を重視して、マンションを選んだ人が多いことがうかがえる。
一方、2番目の「間取り」(63.7%)についてだが、広さは変えられないが、間取りはリフォームすれば変えることができるし、家具などで空間を上手く仕切って暮らすなどの工夫もできる。後から変えるには補強工事などが必要になる「建物の耐震性能」への考慮が、もっと多くてもよいのではないかと思う。
マンションの管理面では「管理会社」「管理規約」「管理費・修繕積立金の額」
マンションの維持管理で考慮した事項を聞く(複数回答)と、上位に挙がった項目は「優良なマンション管理業者であること」50.0%(前回=平成25年度調査41.7%)、「管理規約の内容が妥当であること」43.0%(前回33.4%)、「管理費及び修繕積立金の額が十分であること」41.8%(前回41.2%)となった。
マンションのルールブックと言える「管理規約」の内容の妥当性については、「考慮する」という回答が、前回の33.4%から43.0%へとこの5年でかなり上がっている。実は、マンションで民泊を可能とするのか否かを規約に明示するように、2017年(平成29年)に国土交通省が推奨するマンション標準管理規約が改正された。これを受けて、新築マンションはもちろん、既存のマンションでも管理規約を見直して民泊に関する記載を追加するなどの改訂をする事例が多かった。おそらく、こうした時代に応じた管理規約の内容になっているかどうか、関心が高まったことなどが背景にあるのだろう。
一方、大規模修繕工事の重要性は広く知られているので、そのために必要な修繕積立金の額についても、多くの人が考慮したことがうかがえる。
ちなみに、月額の修繕積立金の額の平均は1万1243円、駐車場使用料等からの充当分を含む修繕積立金の額の平均は1万2268円で、前回調査(1万783円、1万1800円)より増加している。
「特にトラブルがない」マンションが減少!?
マンション内のトラブルの発生状況を聞く(複数回答)と、「特にトラブルがない」という回答が23.2%になり、前回調査の26.9%より減る結果となった。
一方、トラブルが発生した内容については、「居住者間のマナー」が55.9%と最も多く、次いで「建物の不具合」が31.1%、「費用負担」が25.5%となった。また、前回調査より大きく増加したのは「その他」の項目だけだった。
トラブルとして過半数の「居住者間のマナー」については、カギを握るのが「管理規約」とそれに付随する「使用細則」だ。そのマンションでどういった暮らし方をすることになっているか、ルールブックの内容が重要になる。さらに、マナーを守らない居住者がいる場合、管理組合が注意を促すことになるが、それをサポートする「管理会社」のノウハウや助言が欠かせない。「費用負担」のトラブルも同様なので、管理会社や管理規約は、トラブル防止の観点でも考慮すべきポイントと言えるだろう。
調査結果を見ていくと、マンション選びでは「立地」や管理面の「管理会社」「管理規約」「管理費・修繕積立金の額」が重視されていることが分かった。
実は、チェックポイントとして、後から変えられない、変えるのが容易ではないことを重視するのが鉄則だ。例えば、管理規約や管理会社を変える場合、管理組合で審議をして、総会の場で規定数による多数決で決議する必要がある。管理組合が活発に運営されていないと、こうした合意形成を図ることが難しいのが実態だ。そういう意味では、マンションに住むなら管理組合の活動に関心をもって、積極的に関わっていってほしい。