外国人や若者中心に普及が進む「民泊」
民泊とは、ホテルや旅館などではなく、一般人の住居にお金を払って宿泊することをいう。民泊について定め、2018年6月に施行された住宅宿泊事業法によると「旅館業法第3条の2第1項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業」とある。
住宅宿泊事業法では、民泊事業をするための条件が定められている。一例を挙げると、宿泊させる日数が1年間で180日を超えないこと、住居に台所、浴室、便所、洗面などの設備が備えられていること、生活の本拠として使用されていることなどがある。
民泊の注目が高まったのは、2008年に米国のサンフランシスコでスタートした「Airbnb(エアビーアンドビー )」などの海外の民泊仲介サイトの普及によるところが大きい。日本国内の住宅に宿泊する民泊利用者は右肩上がりに増えている。
観光庁の調査によると、2018年10月~11月の2カ月間の利用者数は全国で約21万人、同年12月~2019年1月の利用者数は約25万人だった。利用者の割合は、外国人が約75%で、日本人は約25%。約4人に1人が日本人の利用者だ。年齢は外国人に実施した調査によると、20代以下が61%を占め、30代~40代が33%と続いた。グループでの利用が多いという。若者やグループ利用が多い傾向は、日本人の場合にも当てはまるだろう。
「ヤミ民泊」って何? うっかり泊まるとどうなる?
民泊を利用する際に気をつけたいのが「ヤミ民泊」だ。ヤミ民泊とは、住宅宿泊事業法に基づいて都道府県知事に届出をしていなかったり、住宅宿泊事業を適切に運営していなかったりする違法事業者が行う民泊のことを言う。
ヤミ民泊を利用する危険性は主に2つある。まずは、適正なサービスを得られない可能性が高いことだ。法律では、民泊事業を運営する上で取るべき行動や措置を定めている。例えば、宿泊者1人当たり3.3平米以上を確保し、清掃や換気などを行い衛生を確保する。安全確保のため、非常用照明器具を設けたり、避難経路を表示したりするなど様々ある。違法業者の場合、こうした本来受けられるべきサービスや措置を受けられない可能性がある。
次がトラブルに巻き込まれやすいことが挙げられる。例えば、業者との金銭トラブル。仲介サイトに提示されていた以上の料金を請求される場合もあるという。また、マンションの住戸に見知らぬ第三者が宿泊することになるケースが多いため、宿泊者と住人とのトラブルが起きたり、犯罪の温床にもなりかねない。昨年、大阪のヤミ民泊を転々としていた外国人が殺人事件を起こした例もある。
厚生労働省が2016年10月~12月に行った調査によると、調査対象施設のうち、約3割は旅館業法上の無許可営業に該当し、約5割は物件の所在が確認できないという結果が出た。旅館業法に基づいて適切に営業していた施設は2割程度しかなかったのだ。
それが法施行後に行った調査によると、状況は大きく改善した。「登録する住宅宿泊仲介業者55社(平成30年9月30日時点)の取扱件数約4万1604件のうち、適法と確認できなかった件数は6585件、割合にして16%まで減少しました」(観光庁観光産業課の波々伯部室長)。
うっかり泊まらないための3カ条とは?
とはいえ、ホテル不足が予想される長期連休などは「やっと見つけた空室がヤミ民泊だった!」といった事態に陥らないとも限らない。誤って利用しないためには3つのポイントがある。まずは、仲介サイトで宿泊先を選ぶ際、都道府県知事への届出番号があるかを確認することだ。届出番号がない民泊事業者は違法になる。
次に、仲介サイトも国に登録している事業者のサイトを利用することだ。未登録の海外の業者や個人が運営するような仲介サイトには、ヤミ民泊が掲載されている可能性が高い。登録済の仲介業者のリストは、観光庁の民泊制度のサイトに載っているので確認しよう。
3つ目が、民泊する住居に着いた際、住居にステッカーが貼られていることと、そこに記載されている内容と届出内容が同じかどうかを確認することだ。住居を民泊として使う場合、ステッカーを貼ることが、法律によって義務付けられている。
中には、届出をしていないにも関わらず、他の民泊事業者の届出番号を使ったり、他の届出番号を使いまわしたりするヤミ民泊業者が一部存在する。ステッカーが貼られていない場合はもちろん、仲介サイトの記載内容と異なる場合は、仲介サイトや住居がある自治体などに問い合わせることだ。
規制には地方差がある
民泊は、ホテルや旅館と比べてリーズナブルに滞在できることが魅力的だ。今後も外国人や若者を中心に利用者は増え続けるだろう。最近では一般住宅だけでなく寺院に宿泊できたり、民泊事業も大きなイベントが行われる時に単発で実施できたりするなどといった新たな試みも始まっており、注目度は一層高まるに違いない。
一方で、民泊の利用が増えることによる弊害もある。多いのが、宿泊者による騒音などをはじめとする周辺住民とのトラブルだ。
民泊利用者が多い都市は、東京都、大阪市、京都市、札幌市、那覇市などがある。読者の中には、自分の家で民泊事業をしてみたいという人がいるかもしれないが、注意点がある。それは、国が定める規制より厳しい規制を敷いている自治体が多いことだ。
例えば、東京23区の多くは、民泊提供上限日数の年間180日以内に加え、週末しか運営できないなど規制を厳しくしている。観光客が多くて問題になっている京都市では1月から3月15日までの閑散期しか民泊を認めていない。これらの多くは住民への配慮によるものだろう。その一方で、京都市でも空き家になっている町屋を再生して民泊にする場合は規制から除外するなど、民泊制度をより積極的に活用する動きもある。
東京五輪や大阪万博などビッグイベントを控える日本にあって、民泊利用は増え続けるだろう。民泊についての正しい知識を持った上で、宿泊者として民泊を利用したり、自らの住居で民泊したりするのは面白いかもしれない。
観光庁