「2017年度戸建注文住宅の顧客実態調査」結果を報告/(一社)住宅生産団体連合会
建築費が増加し、平均の建築費単価は1万円アップの27.5万円/平米
この調査は、三大都市圏と地方都市圏に注文住宅を建てた人を対象に住団連が毎年行っているもので、2017年度で第18回目となる。
まず、注文住宅を建てた人の最新の平均像を見ていこう。
世帯主年齢の平均は40.5歳で、平均世帯人数は3.4人。ここ数年、「25~29 歳」や「30~34歳」の世帯主の比率が増加傾向を示しているという。
平均延べ床面積は129平米で狭くなる傾向にある。一方で、平均建築費(3535万円)は昨年度より81万円増加し、土地代を加えた平均住宅取得費(4889万円) も昨年度より134万円増加するなど、コストは増加傾向にある。また、世帯年収が伸び悩むなか、住宅取得費の年収倍率は6.5倍、借入金年収倍率は4.5倍にそれぞれ上昇した。
このように、建物の面積が狭くなるのに建築費は増加しているので、平均の建築費単価も上昇し、昨年度より1万円アップの27.5万円/平米となった。
「長期優良住宅」や「低炭素住宅」の認定住宅が増加し、8割以上に
では、建築費単価が上昇するのは、どういった理由からだろう?
もちろん、大工などの職人不足による人件費の高騰などで、純粋に建築費自体が上がった部分もあるだろう。が、求められる性能の要因も見て取れる。
調査結果で、「長期優良住宅」(81.1%)や「低炭素住宅」(1.6%)の割合が増加し、一般住宅(15.8%)が減少していることに注目したい。
「長期優良住宅」とは、長期にわたって良好な状態を保てるようなさまざまな基準をクリアした住宅、「低炭素住宅」とは、二酸化炭素排出の削減ができる省エネ性の高い構造や設備を備えた住宅のことだ。いずれも国が定めた認定基準を満たす必要があり、高い性能を求められるがゆえに建築費も高くなる。
そのため、これらの認定を受けた住宅については、「住宅ローン減税(住宅ローン残高の1%を10年間にわたって所得税などから控除する制度)」の最大控除額が400万円→500万円に拡大し、「登録免許税」も減税されるなどのメリットを受けられる。「長期優良住宅」の場合はさらに、新築住宅の場合に「固定資産税(家屋)を1/2に減額」する措置が、一戸建ての場合で3年間→5年間に延長されるなどのメリットもある。
つまり性能の高い住宅が増えることで、建築費が上昇するという理由が考えられるわけだ。
なお、コスト増に対しては、自己資金(平均1372万円)と借入金(借入ありのみ平均4031万円)を増やすことで対処していると見られ、親などから贈与を受けた比率(18.0%)や贈与を受けた人の平均贈与額(1145万円)は下がっている。
土地なしで注文住宅を建てる人が増加傾向、過半数が新たに土地を購入
さて、コスト面で次に注目したいのは、土地の取得方法だ。
昔は注文住宅と言えば、元の家を建て替えて注文住宅を建てる「建て替え」が主体だった。ところが、「建て替え」比率(28.5%)は減少トレンドにあり、今は、新たに土地を購入して注文住宅を建てる「土地購入・新築」の比率(51.4%)が上がり、過半数を占めている。
「建て替え」では、建築費が住宅取得費総額のほぼ全てを占めるが、その平均建築費は4026万円と最も高くなる。これに対し、建築費に加えて土地代が別途必要となる「土地購入・新築」の平均建築費は3223万円だ。「建て替え」は土地代が必要ない分、建築費にシフトできるというわけだ。
昨年度からの変化を見ると、「建て替え」の建築費は50万円増加したが、「土地購入・新築」の建築費は78万円増加し、さらに新たに取得した土地代は昨年度より95万円増加して2160万円になった。「土地購入・新築」のほうが、建築費も土地代も負担が増えたことになる。
さて、注文住宅を建てる人の過半数は別途土地を取得しているが、土地の取得は難しい環境になっている。
利便立地の大きな土地は、商業ビル、オフィスビル、ホテル、マンションで競合していることから、住宅の分譲業者の一部は一戸建ての建売販売に手を広げている。そこで、一戸建てが数棟建てられる小さな土地にも、もともとの一戸建て販売業者に加え、これまでより多くの不動産業者で競争することになり、なかなか一般の市場に出回ってこない。こうした状況で、これからの戸建注文住宅の動向はどうなっていくのか気になるところだ。