2022年1月~10月の東京23区の新築分譲マンション平均販売価格は8,157万円と、8,000万円を超える水準を維持している。しかし、住宅取得者がこれ以上の価格上昇について来られない可能性も指摘されており、新築マンション市場の先行きが広く注目を集めている。
同レポートでは、高止まりの背景にある要因として、「マンション原価の上昇」だけではなく、「リーマン・ショック前後での市場構造変化」「旺盛な不動産投資ニーズ」「住宅ローンの良好な調達環境と共働き率の上昇」等、複数の要因があると指摘している。
マンション原価の上昇としては建物の建築費用と用地取得費用の2つが挙げられる。いずれの費用も上昇傾向にあり、建設プロジェクトが複数年に及ぶことを踏まえると、当面は尾を引く可能性が高いと考察している。
一般的に原価上昇が販売価格に直接反映されるとは限らないが、新築マンション市場では、リーマン・ショック後に新築マンションを供給するプレーヤーが減少し寡占化が進んだ。経営基盤の安定した不動産デベロッパーに売り急ぐ傾向はなく、市場に残ったプレーヤーの中心として影響を強めている。結果として、足許においては原価上昇が販売価格に反映されやすい環境であるとしている。
さらに東京23区の不動産市場には、国内外からの投資資金が流入している。とりわけ、新築マンションの適地と競合しやすい賃貸マンションは、賃料のボラティリティの低さ等からコロナ禍において投資家から強い人気がある。こうした賃貸マンションへの旺盛な投資ニーズは、新築マンションの用地取得費用の上昇に直結している。
また、価格上昇を支える要因は需要側にもみられる。具体的には、住宅ローンの良好な調達環境、共働き率の上昇等が寄与している。住宅ローンの調達環境については、金融機関の積極的な住宅ローンの貸出が継続しており、東京都全体の年収倍率は上昇傾向にある。共働き率の上昇については、家計の家賃負担力の向上につながっている。住宅取得者としても、テレワークの普及で郊外需要も一部生じているが、「時間をお金で買う」という目的から未だに職住近接マンションへの需要は強い。
これらが東京23区で新築マンション価格の高止まりが生じる背景だとしており、価格の高止まりを支える各要因は一過性とは言えず、今後も持続的な影響を新築マンション市場に及ぼすと考察している。
ニュース情報元:三菱UFJ信託銀行