世帯年収アップも、住宅取得費や借入額も増加! 戸建注文住宅の実態調査20…

戸建注文住宅の住宅取得費や借入額が増加!ローンの借り方や最新設備にも影響あり?

(写真/PIXTA)

住宅生産団体連合会(以下、住団連)の「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」の結果が公表された。ウッドショックなど建築資材の高騰が指摘されていたので、コストアップが気になるところだが、どうなっていただろう。住宅ローンの借り方や住宅に設置する最新の設備などにも、影響はあったのだろうか?
【今週の住活トピック】
「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」結果を報告/(一社)住宅生産団体連合会

昨年度よりも住宅取得費が増加し、借入額や自己資金が増加

この調査は、三大都市圏と地方都市圏に注文住宅を建てた人を対象に住団連が毎年行っているもので、2021年度で第22回目となる。

まず、注文住宅を建てた人の平均像を見ていこう。世帯主年齢の平均は39.9歳で、平均世帯人数は3.14人。夫婦に子どもが一人というのが、平均的な顧客層なのだろう。

次に、建てた注文住宅の平均像を見ていこう。
●建築費は3816万円(対昨年度1万円増)
●建築費の1平米単価は30.6万円(対昨年度0.5万円増)
●土地代を含む住宅取得費は5783万円(対昨年度446万円増)
●延べ床面積は124.5平米(対昨年度2.3平米減)
●自己資金は1481万円(対昨年度188万円増)
●借入額は4967万円(対昨年度366万円増)
●世帯年収は993万円(対昨年度29万円増)
●借入金の年収倍率5.00倍(対昨年度0.23ポイント増)
※土地の取得方法は、従前の敷地(建て替え)28.2%、新たに購入(54.1%)などがある。

住団連では、「世帯年収が増加したものの、建築費、住宅取得費が上昇し続けていることから、延床面積を抑制するとともに、自己資金や借入金を増やすことで対処している状況が読み取れる」と分析している。

約4割が夫婦で住宅ローンを借り、夫婦で返済する形をとっている?

住宅取得費が増加するにつれて、借入額も増加しているが、では誰が住宅ローンを借りているのだろう?結論から言うと、夫婦で力を合わせて借りている人が多いことがわかった。

夫婦2人でお金を出し合ってマイホームを買う場合、方法はいくつかある。
最近増えているのが「ペアローン」だ。ペアローンとは、1つの物件に対して、夫婦それぞれが自分の収入に応じて住宅ローンを借りるというもの。(ちなみに、ペアローンは夫婦に限らず、同居している親子などでも利用可能)

もう一つの方法が、「収入合算」。収入合算は、例えば夫が住宅ローンを借りる場合に、妻の収入を上乗せして、その収入に対してローンを借りるもの。民間金融機関の多くは「連帯保証型」の収入合算を採っているので、住宅ローンの返済をするのは夫だが、妻は夫の連帯保証人となって万一のときに返済の義務を負う。なお、妻の収入の全額ではなく、半分程度を上乗せできるとする金融機関が多い。(ちなみに、【フラット35】など一部のローンでは「連帯債務型」の収入合算を取り扱っている)
※ローンを借りた人を債務者といい、連帯保証が債務者の返済を連帯して保証するのに対し、連帯債務は二人とも債務者となる。

この調査では、ペアローンあるいは収入合算を利用しているかどうかを聞いている。その結果、39.6%がいずれかを利用して、夫婦(または親子)でローンを借りている。

また、ペアローンと収入合算と、どちらが多いかというと、収入合算が55.8%、ペアローンが44.2%という比率になった。

ペアローン・収入合算の利用状況(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

ペアローン・収入合算の利用状況(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」をもとにSUUMO編集部作成)

甚大化する災害や新型コロナウイルスの影響で、住宅のプランは変わった?

次に、住宅のプランを見ていこう。近年は、甚大化する災害や新型コロナウイルスなどの影響で、注文住宅のプランにも変化が見られる。

新しい生活様式などへの対応・関心を複数回答で聞いた結果から、採用した・あるいは関心があるの回答率の高い(30%を超える)ものを抽出してみた。

【テレワーク・オンライン授業環境への対応】
テレワークスペースの設置         43.3%
【ステイホームに対応した快適な居住性能】
良好な遮音性・防音性・省エネ性等     40.5%
【感染防止に配慮した住宅】
玄関に近い洗面スペース          41.8%
【災害時の自立的継続居住性能(レジリエンス性の強化)】
耐震性の確保(長期優良住宅等)      64.3%
創エネ設備(太陽光発電・エネファーム)  35.2%

自宅で仕事をしたり長時間自宅にいたりするので、仕事のスペースや住宅性能を求める意識が高くなっていることがわかる。また、災害も増えていることから、自宅のレジリエンス性への関心も高い。

こうした変化を受けて、最新設備・技術などの採用率が近年増加したものを調べると、以下の3つが顕著に伸びていた。

最新設備の採用率の比較

最新設備の採用率の比較(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」をもとにSUUMO編集部作成)

なお、最近注目されるZEH(net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語)についての回答を見ると、2021年度は「ZEHにした」割合は27.9%で、「検討は行ったが、ZEHにしなかった」が24.4%となった。ZEHの採用率は年々増加しているが、現状では3割弱といったところだ。

ZEHの検討の有無(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

ZEHの検討の有無(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」をもとにSUUMO編集部作成)

ZEHにしなかった理由では、「スケジュールが大きくかわってしまう」が 45.3%と最も高く、次いで「掛かり増し費用が高いと感じたから」が22.4%だった。ZEHにするには、住宅の省エネ性能を高めたうえで、太陽光発電パネルなどの創エネ設備に加え、エネルギー消費効率の良い給湯器や冷暖房設備、照明などを設置する必要があり、その分コストがかかる。そのため、ZEHではない住宅よりも費用が高くなることや、それをカバーするZEH関連の補助金の申請・承認に時間がかかることなどが、採用しなかった要因となっていることが考えられる。

注文住宅のメリットは、建て主が住宅の性能や間取り、設備を選べることだ。若い世帯では夫婦共働きが当たり前になり、住宅ローンも2人で力を合わせて借りている。調査結果の中には、「家事負担軽減に資する工事(ビルトイン食器洗機、浴室乾燥機、宅配ボックス、キッチン・洗面所・トイレに設置する収納等)」の採用率が50.2%という結果もあり、家事が楽になるものを積極的に選んでいることもうかがえる。

さらに、耐震性や省エネ性、災害対策などにも関心が高い。しかし、費用面の制約もあり、優先順位をつけて選んでいることがうかがえる結果だ。今はマイホームに対して求める機能も多様化しているので、ますます予算内で何を選ぶかしっかりと考えることが大切になっていくだろう。

引用元: suumo.jp/journal