「総合住宅展示場来場者アンケート 2021調査報告書」を公表/住宅生産振興財団・住宅展示場協議会
コロナ禍の新しい生活様式が家づくりにも影響
まず、在宅勤務やテレワークの状況を見ていこう。
新型コロナウイルス発生・拡大以前(2020年4月以前)から在宅勤務・テレワークを実施していたのは、10.1%だった。これに対し、発生・拡大以降になると40.8%にまで拡大し、調査時点では36.4%が在宅勤務・テレワークを実施していた。
調査結果の「在宅勤務・テレワークを意識した家づくりへの関心度」(関心がある+やや関心がある)を見ると、前年の35.0%から7.7ポイント増えて、42.7%になっている。内訳を見ると、年代や働き方(共働きかどうかなど)による違いと比べて、在宅勤務・テレワーク実施別による違いが大きかった。
特に「関心がある」という回答比率を見ると、在宅勤務・テレワークのみ(通勤0割)が42.9%と最も高く、在宅勤務・テレワーク3割(通勤7割)の23.2%まで順次下がっていく。ただし、「やや関心がある」を含めた“関心度”で見ると、在宅勤務・テレワーク7割(通勤3割)が84.1%(39.7%+44.4%)と最も高くなった。在宅勤務・テレワークの実施経験によって、関心の強さと広がりが異なるようだ。
半数以上が「空気環境や換気に配慮した空間」を検討したい
次に、具体的にどういった家づくりをしたいのかを見ていこう。
「家づくりの際、検討したい空間や設備」で、最も検討したい比率が高かったのは、「空気環境や換気に配慮した空間」の52.5%で、次いで「仕事と家事・子育てを両立できる空間」の40.0%となった。
ただし、年代や働き方などによる違いもある。例えば、「仕事と家事・子育てを両立できる空間」では、若年層(34歳以下)が最も高く、「夫婦がお互いひとりで仕事ができる空間」では、熟年層(50歳以上)が高くなった。家庭に子どもがいる場合の年齢の違いなどが、影響しているのだろう。
また、在宅勤務・テレワークの実施率の高いほうが、「自宅で仕事ができる空間」や「仕事と家事・子育てを両立できる空間」で検討したい比率が高い傾向が見られた。
一方、「空気環境や換気に配慮した空間」はあまり違いがなく、検討したい比率がどの属性でも高い点が注目される。「自宅で仕事ができる空間」などの項目で検討比率の低い、在宅勤務・テレワークはしていない(通勤10割)層では、「空気環境や換気に配慮した空間」56.1%と最も高く、特に空気環境への関心が高いことがうかがえる。
ZEH導入・採用意向は3割弱にとどまる
コロナによる新しい生活様式と同様、住宅業界に大きな影響を及ぼしているのが「2050年カーボンニュートラル」だ。この実現に向けて政府が最も力を入れているのが、ZEH(ゼッチ)住宅。「ZEH」とは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略したもので、住宅の断熱性・省エネ性能を上げることに加え、太陽光発電などによってエネルギーをつくり、年間の「一次エネルギー消費量」がゼロ以下の住宅のことだ。
調査結果では、ZEHの導入・採用意向を聞いている。「既に導入・採用を進めている」は3.9%、「導入・採用を検討している」は6.2%、「導入・採用したい」は18.7%で、導入・採用意向ありの合計は28.8%だった。
調査ではZEHの認知経路も聞いているが、多くはハウスメーカーの営業担当や展示場と回答している。展示場に来る、住宅検討がまだ初期段階の人にとって、間取りや換気といった、今、住んでいる住宅でも気になっている点に比べて、まだ視野に入っていないのだろう。プランの詳細を検討する段階で、希望に入ってくるのかもしれない。
政府がZEHの普及に力を入れていることもあって、2022年度の税制改正では「住宅ローン減税」などの優遇制度で、ZEHなどの省エネ性能の高い住宅がより優遇されるようになる。こうした状況を受けて、今後は導入・採用意向が高まるのかどうか、注目したい点だ。
見てきたように、長引くコロナ禍の影響などで、家づくりの計画も大きな変化が見られた。これからも、家族構成だけでなく、テレワークや共働きなどの働き方の違いが、家づくりに影響していくのだろう。