省エネ住宅に50万円の助成金も!東京都が脱炭素化に本腰

住宅政策におけるカーボンニュートラルが加速!東京都も補正予算で対応

(写真/PIXTA)

以前は慎重な構えだった「カーボンニュートラル」だが、菅政権が積極姿勢に舵を切って以来、住宅の脱炭素化が加速している。国交省が令和3年度の補正予算で「こどもみらい住宅支援事業」を創設し、特に若い世代に省エネ性能の高い新築住宅の取得を促す一方、東京都も補正予算で住宅の省エネ化を後押ししている。
【今週の住活トピック】
令和3年度補正予算で「東京ゼロエミ住宅」予算を増額/東京都

2050年のカーボンニュートラルに向けて注目を集めるZEH住宅

2021年10月31日からイギリスで開催されたCOP26(第26回国連気候変動枠組条約締約国会議)において、日本政府が脱炭素を目指す方策の一つに、住宅のZEH(ゼッチ)比率を高めることを挙げた。2050年のカーボンニュートラルに向けて、住宅の省エネ性能はZEH基準が一つの目安になっていくわけだが、詳しくは、当サイトの「脱炭素社会の実現に政府が本腰。2030年の住宅のあるべき姿とは。」、「カーボンニュートラルで注目のZEH住宅、2021年の導入率は26%」の記事で説明をしているので、確認してほしい。

政府のこうした動きを受けて、一戸建て住宅関連の業界団体等がこぞってサイト上に「ZEH専用」ページを設けている。

(一般社団法人、以下一社)住宅生産団体連合会「ZEH関連情報」ページ、(一社)日本木造住宅産業協会「ZEH特設ページ」、(一社)プレハブ建築協会「ZEH特設サイト」、(一社)リビングアメニティ協会「ZEH専用サイト」などを見ると、いずれもZEHとはどんな住宅かを説明し、会員各社や政府(国土交通省、経済産業省、環境庁)の関連サイトを紹介するものになっている。

ちなみに、「ZEH(ゼッチ)とは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)の略。快適な室内環境を保ちながら、住まいの断熱化と高効率な設備によって、できる限り省エネにつとめ、太陽光発電などでエネルギーをつくることにより、年間で消費する住宅のエネルギー消費量が、正味(ネット)で、おおむねゼロ以下になる住宅のこと」(住宅生産団体連合会「ZEH関連情報」より)だ。

住宅の断熱化だけでなく、電気などのエネルギーの消費量の少ない住宅設備を設置し、太陽光発電などエネルギーを生み出す設備も求められる。当然、新築時のコストにも影響する。となると、補助金などでコスト上昇をカバーする政策も抱き合わせで用意することが求められる。

国土交通省や東京都は令和3年度補正予算等で住宅の省エネ誘導に対応

政府は、令和3年度補正予算で「こどもみらい住宅支援事業」を創設し、子育て世帯・若者夫婦世帯に対し、省エネ性能の高い新築住宅を取得したり住宅の省エネ改修をしたりする際に補助金を交付する事業を開始した。新築住宅で最大100万円の補助金で住宅取得費をカバーする構えだ。

令和4年度の税制改正でも、「住宅ローン減税」を延長する際に、住宅の省エネ性能によって減税額を変えることで、現行の省エネ基準に適合する住宅やZEH水準などの住宅へと誘導を図る動きになっている。

それぞれの詳しい内容については、当サイトの「子育て世帯・若者夫婦の新築住宅に最大100万円補助!新設「こどもみらい住宅支援事業」を解説」や「住宅ローン減税、2022年以降どうなる? これから家を買う人が知るべきポイント」ですでに説明しているので、見てほしい。

一方、東京都でも令和3年度の補正予算で、「『東京ゼロエミ住宅』の新築等に対する助成事業拡充」や「家庭における熱の有効利用促進事業で一部助成率の引き上げ」などを行っている。こうした動きは、今後広がっていくと考えられるので、住んでいる自治体で住宅の省エネ化に対する補助金などがないか、事前に調べるようにするとよいだろう。

まだ間に合う!補正予算による東京都の助成制度

実は東京都の場合、地価が高いことなどもあって、住宅の敷地が狭く、2階建てや3階建ての一戸建てが多い。また、住宅が密集しているので、隣家の日当たりなどを考慮した制限などにより、屋根の面積が小さく形状も変則的になることが多い。となると、屋根に太陽光発電設備をあまり設置できないことになる。

したがって、消費量と創出量でプラスマイナスゼロにするだけの十分な発電量を生み出せないので、ZEH水準の住宅にするのが難しいというのが、東京都ならではの現状だ。

そんな状況下でも、住宅の省エネ化を推進しようと考えられたのが、「東京ゼロエミ住宅」だ。太陽光発電などによる再生可能エネルギーの基準を緩和し、住宅の断熱性や設備の効率化などを重視した、独自の省エネ基準となっている。※ゼロエミとは、ゼロ・エミッションの略

東京都では2019年度から「東京ゼロエミ住宅」の助成制度を設けている。今回、補正予算によって約19億円を追加し、助成対象となる件数を増やした。東京都内の「東京ゼロエミ住宅」の認証を受けた新築住宅が対象で、助成金額は一戸建てで50万円/戸、集合住宅で20万円/戸となっている。

「東京ゼロエミ住宅」の補正予算による追加募集は、第7回の募集が2022年1月24日から1月28日まで、第8回が2月28日から3月4日までと予定されている。

東京都では、窓やドアの断熱改修でも助成制度(家庭における熱の有効利用促進事業)を用意しているが、令和3年度の補正予算によって、助成率を1/6から1/3に引き上げた。一つ以上の居室のすべての窓を指定された製品で断熱改修することなどが条件で、助成率の引き上げによって、「高断熱窓」で100万円、「高断熱ドア」で16万円にそれぞれ上限額が引き上げられた。2022年1月1日から3月31日までが申請受付で、予算額に達し次第終了となる。

お得な制度があれば、積極的に利用したいものだが、もちろん注意点もある。こうした助成制度は、住宅性能を高めるためにコスト高になる分を支援するためのものだ。補助金をもらうためだけに、大切な住宅の取得を急いだり、十分考慮することなく性能のレベルを決めたりするのは、本末転倒だ。

一方で、今後は住宅の省エネ性能が求められることになるので、性能の違いなどについて事前に情報を集め、しっかりと理解しておくことが大切だ。そのうえで、助成制度などを賢く利用できるよう準備をしておくことも必要だろう。

引用元: suumo.jp/journal