会社員だけど毎日サーフィンする暮らし。ワーケーションで“プチ欝”脱出 私…

会社員だけど毎日サーフィンする暮らし。ワーケーションで“プチ欝”脱出 私のクラシゴト改革5

(写真提供/Eさん)

メルカリでプロダクトマネジャーとして働くEさんは、現在25歳。コロナ禍をきっかけに、知人とともに神奈川県小田原市や長崎県・五島列島でのワーケーションに挑戦した。趣味のサーフィンを楽しみつつ、今までどおり仕事もするという暮らしを経験したEさんが学んだこととは?
連載名:私のクラシゴト改革
テレワークや副業の普及など働き方の変化により、「暮らし」や「働き方(仕事)」を柔軟に変え、より豊かな生き方を選ぶ人が増えています。職場へのアクセスの良さではなく趣味や社会活動など、自分のやりたいことにあわせて住む場所や仕事を選んだり、時間の使い方を変えたりなど、無理せず自分らしい選択。今私たちはそれを「クラシゴト改革」と名付けました。この連載では、クラシゴト改革の実践者をご紹介します。

鎌倉、小田原、五島列島。住む場所を変えて「コロナ鬱」を克服

東京都内に住み、都内の職場に出勤していたEさん。コロナ禍の広がりにより、2月末から自宅でテレワークを始めたものの、程なくして「プチ鬱」のような状態になってしまったという。

「生活圏が自宅から半径500m以内になり、アウトドア好きな自分にはかなりきつかったです。また、毎日誰とも会わずに生活するようになってから、会社で人と会っていたのは、自分にとって大事な時間だったんだと気づかされました」

会社のメンバーとはオンライン会議で頻繁に話していたものの、Eさんの会社では、他者の時間を重んじているため、なかなか雑談がしづらかった。今までは職場で自然と行われていた雑談の機会がゼロになってしまったことも、メンタルの落ち込みに拍車をかけた。

環境を変える必要性を感じたEさんは、3月に鎌倉の実家に帰省。趣味のサーフィンをする生活を始めることを思い立った。

(写真提供/Eさん)

(写真提供/Eさん)

(写真提供/Eさん)

(写真提供/Eさん)

「毎朝サーフィンをしてから、仕事を始めるようにしました。体を動かすので健康になりましたし、仕事への士気も高まりました。自分の一番好きな趣味を毎朝できるのは、すごく幸せでしたね」(Eさん)

健康的な暮らしで心身ともに調子を整えたEさんは、5月に入ると、民泊サービスAirbnbで見つけた小田原の一軒家で、2カ月間のワーケーションに挑戦する。かつての自分と同じように、家にこもって仕事をしていた同僚らに声をかけ、生活を共にした。

「一緒に暮らす人がいたことによって、生活にメリハリが生まれました。みんな普段はかなり遅くまで働いてしまうタイプなんですが、平日の夜は早めに切り上げて食事をしたり、週末も予定を立てて一緒に出かけたりして。ダラダラと仕事ばかりしてしまうことはなかったですね」

Eさんの“新しい暮らし”への試行錯誤はまだ続く。7月からは会社の先輩や同期を誘い、さらに遠方でのワーケーションを企画した。サブスプリクション住居サービスのHafHを利用して物件を選定し、大自然の中、五島列島のシェアハウスで2カ月間暮らすことに。今回は、HafH会員の初対面の3人とも同じシェアハウスで過ごすことになった。

「初対面の方たちとも、一緒にご飯を食べたり、週末に外出をしたりして過ごしました。動画編集の仕事をしているフリーランスの人もいて。会社員の自分たちとは全然違う働き方をしているんだと知り、とても新鮮でした」

五島では、海でスノーケルや海水浴を楽しんだ(写真提供/Eさん)

五島では、海でスノーケルや海水浴を楽しんだ(写真提供/Eさん)

そして10月に入り、再び東京の自宅に戻ってきたEさん。サーフィンも仕事もする生活を経験した今、ワーケーションのメリットは「自分が好きなことや、大切にしているものの近くで、今までと変わらず仕事に打ち込めること」だと話す。

今後については、サーフィンができる暮らしを続けるべく、東京から湘南エリアへの移住を計画中だ。今まではテレワークを続行するか否かなどの会社の方針が固まっていなかったために、単発的なワーケーションを繰り返していたものの、最近ようやく「月1回出社推奨」という方針が決まり、新しい暮らし方の見通しを立てられたという。

Eさんは、今年さまざまな暮らし方を試せたのは、会社のカルチャーによる面も大きかったと振り返る。

「今年、ワーケーション先で出会った人の中には、会社に隠れてこっそりワーケーションしている人もいて、息苦しそうでした。自分の場合は『こういう生活をやってみたいんです』と言うと、会社のメンバーが『いいね!』と後押ししてくれたのがありがたかったです」

ワーケーションの壁「時間・距離」をどう克服する?

働きながらサーフィンのできる生活を経験したEさんは、東京から離れて働く上で、課題に感じたことが2つあったと話す。

五島のシェアハウスで同僚と共同生活。写真は一緒に朝食をつくっている様子(写真提供/Eさん)

五島のシェアハウスで同僚と共同生活。写真は一緒に朝食をつくっている様子(写真提供/Eさん)

1つ目は、時間の使い方に関する問題だ。サーフィンをしている間や、その移動時間は仕事ができないため、仕事で関わるメンバーなど周囲に迷惑をかけない工夫が求められる。

「五島列島にいたときは、夕方に来るいい波に乗ってサーフィンをするために、17時には一旦仕事を終えて海に向かうようにしていました。ただ、まだほとんどのメンバーが働いているので、そのあと自分への確認事項が発生して業務が滞ってしまうことのないように、人とのやりとりが発生する仕事はできるだけ日中に済ませるようにしました。サーフィンをするからといって、仕事で手は抜きたくはありません。今まで通りのアウトプットを出すために、時間の使い方はかなり意識しました」

2つ目は、五島列島で感じた「ユーザーとの距離」に関する問題だ。Eさんが開発に携わっているWEBサービスは全国に展開されているものの、五島列島にはそのサービスを導入している店舗は見当たらなかった。Eさんの業務に直接影響があったわけではないが、自分たちのサービスが目に入らなくなったことで、店舗でのカスタマーの行動観察ができなくなってしまったという。

この問題については、解決策はないものの、「自分たちのサービスを地域に浸透させるにはどうしたらいいかと考えるきっかけになりました」と、Eさんは前向きに捉えている。

長崎の古民家で、同僚と一緒にワーケーション(写真提供/Eさん)

長崎の古民家で、同僚と一緒にワーケーション(写真提供/Eさん)

「どこで暮らすか」だけでなく、「誰と暮らすか」が大事

東京を離れる上でいくつかのハードルはあったものの、Eさんは「『もはや東京で暮らす必要はない』と実感した」と話す。

「地方で暮らしてみて、自分は東京に住んでいること自体を幸せに感じているわけではないんだなと気づきました。例えば、大衆居酒屋とか、クラブとか、バーとか、そういう東京らしい場所で遊びたい欲求は、今はまったくありません。さらに地方を巡ると、東京はいかに家賃が高いかを思い知らされました」

五島のシェアハウスにて。同居人と東京から遊びにきた友人たちと一緒にタコスづくり(写真提供/Eさん)

五島のシェアハウスにて。同居人と東京から遊びにきた友人たちと一緒にタコスづくり(写真提供/Eさん)

会社に通勤しなくて良いのなら、東京に住み続ける必要はない。頭では分かっていたことでも、実際にワーケーションを体験したことで、Eさんはその理由をはっきりと認識した。

最後に、地方でテレワークをする上で1つ大切なポイントがあると、Eさんは付け加えた。

「五島列島に住んでいたときに、一緒に住んでいた人が仕事の都合で先に帰ってしまい、自分一人になった時期があったんです。そのときはさすがに寂しくて。五島列島は確かに自然は豊かですし、景色は綺麗です。サーフィンはできるし、仕事にも集中して取り組める。でも、そういう環境があるだけで幸せになれるわけではありません。どこに住んでいたとしても、大事なのは一緒にいる人です。自分がワーケーションを楽しめたのは、気の置けない仲間がいたからだと、気づかされました」

大事なのは「どこで暮らすか」だけでなく、「誰と暮らすか」。サーフィンを楽しむためにワーケーションに挑戦したEさんが知ったのは、好きなことを毎日できる幸せと、同じ場所で過ごす人がいることの大切さだった。

引用元: suumo.jp/journal