「自宅の一室で民泊」ってどうなの? ゲストとシェア生活を楽しむスーパーホ…

ひとり暮らしのマンションで“住みながら”民泊! トラブルと無縁の運営方法を聞いた

写真/PIXTA

東京五輪・パラリンピックの開催とも相まって何かと話題になる民泊。認知度が高まる一方で、ポジティブなニュースばかりではないのが実情です。そんななか、新築分譲マンションでひとり暮らしをしながら、自宅の一室をうまくホームステイの場として活用していた女性を発見。楽しいことも苦労していることも全部ひっくるめて、ホームステイ型民泊に対する思いを聞いてきました。

家主が住んでいても、いなくても同じ民泊?その定義に異議あり!

東京23区内、JR山手線のとある駅から歩いて4分ほどの分譲マンションでひとり暮らしをするAさん。民泊専門でホストとゲストのマッチングを手掛けるポータルサイトのレビューにおいて、全項目満点の評価を受けたスーパーホストのひとりです。

民泊新法がいよいよ施行されるという段になって、民泊のゲストが大勢で騒いだり、ごみを散らかしたりするなど、トラブルの話題が増えている印象を受けますが……。

「問題になっているのは家主(ホスト)不在型といわれる部屋をまるごと貸し切るタイプの民泊が多いと感じています。私が行っていたスタイルは、家主が生活している住宅の一室を貸し出す、ルームシェアやホームステイ型なので、やり方がだいぶ違います」

Aさんが指摘するとおり、家主(ホスト)不在型とホームステイ型が同じ民泊という括りで報道されることに違和感を感じ、異議を唱える向きもあるようです。しかしホームステイ型だと家主(ホスト)とゲストの間でトラブルにならないか不安な気もします。

「ゲストたちもトラブルを起こしたくてやっているわけではなく、知らない国に来て、やっていいこと・悪いことを認識していないだけなのです。私は、ゲストに対面でハウスルールや日本でのモラルをきちんと教えることで、未然に近隣トラブルを防いでいました。ゲストも近隣住民も家主もみんなが嫌な思いをせずWin-Winな関係でいられるように働きかけるのもホストの仕事だと思っているので、同じ民泊でも、家主居住型と家主不在型民泊は明確に区別すべきと考えています」

とはいえ、女性のひとり暮らしで、自宅の一室を民泊として見ず知らずの人に提供することに不安や抵抗はないのでしょうか。

「不安はもちろんあります!なので私の場合は、宿泊者を女性に限定するなど、いくつか条件を設けています。自分が納得したゲストだけに宿泊してもらっていたので、大きなトラブルは一度も起きませんでした」

家主(ホスト)不在型の民泊では、どんな家や部屋でも、簡単に収益を上げられるイメージがあります。そうした手軽さが、民泊のトラブルを生み出す一因になっているのでしょうか。

「手軽に収益の上がる商売として手を付けて、オーナーや管理会社がきちんと管理していない……こういった民泊物件はごく一部ですが存在します。そこにメディア報道も追い風となって『民泊』とはこういうものだと認識されてしまっている気がします。家主(ホスト)不在型でも、オーナーがきちんとお出迎えをしたり、手厚くケアしているところはたくさんあるんです。ホストのホスピタリティはゲストのレビューで簡単に判断できますが、悪いレビューが続く物件は、マッチングサイトから登録抹消するなどの規定をつくってほしいと思いますね」

民泊利用者の立場からすると、家主(ホスト)不在型は気軽に利用できる半面ホスピタリティに不安が、ホームステイ型では家主(ホスト)との相性に左右される。どちらも一長一短ですね。

「Airbnbがなぜこんなにブレイクしたかというと、個人のレビューがしっかり書いてあって、どんな部屋かということが事前に分かるからなんです。きれいな部屋とか設備や立地環境ということではなく、どんな人が部屋を提供しているかが、実際に利用した人たちの声から見えてきます。この人の家なら安心して泊まれるということが、民泊では重要な要素ですよね。元々ホームステイ型民泊もカウチサーフィン(※1)のようなノリで始まっています。相互扶助の精神に則って、ホストもゲストも互いに尊重し合う関係性を築けば、そうそうトラブルにはならないと思っています」
※1. 旅行者が世界中の旅先で、現地の人の家に無料で泊まることのできるウェブサービス

シンプルながらゲストが快適に過ごすためのレイアウトが考えられている※写真はイメージです(写真/PIXTA)

シンプルながらゲストが快適に過ごすためのレイアウトが考えられている※写真はイメージです(写真/PIXTA)

「海外なら民泊は当たり前」スーパーホストAさん誕生のルーツ

民泊運営当時は、宿泊者から常に満点レビューを贈られていたスーパーホストのAさん。民泊という言葉が浸透して日が浅い日本で、どのようにしてゲストの満足を引き出す民泊の運営手腕を身に付けたのでしょうか。

「かれこれ20年近く、自分が泊まらせてもらう立場が長かったんです。海外生活をしていた学生時代がシェアデビュー。その国では、シェアメイトと暮らすというのは、新聞にシェアメイト募集広告欄があるほど当たり前のことでした。日本に帰国後もシェアハウスに住んだり、旅行でも他の旅行者と部屋を共有するゲストハウスばかり泊まっています。だからゲスト(宿泊者)が必要とする要素を実体験として理解しているんだと思います」

海外では休暇中など家を長期で不在にする間、他者に貸し出すなど、住宅のシェアは一般的であるとよく耳にします。国内外で、早くからそうした文化に触れてきたことにより、Aさんご自身が民泊を運営するための素地が既に出来上がっていたんですね。

「最初にこの家(新築マンション)を買ったときは、それまでシェアハウスで一緒だった子とルームシェアをしていました。ところが半年くらいで、その子が関西へ転勤になってしまって。新しいシェアメイトを募集するのが億劫(おっくう)だなぁと思ったのが、民泊を始めたきっかけですね」

ルームシェアであれば日本でも広く認知され、民泊と比べればポータルとなるマッチングサイトも多い印象を受けます。そのままシェアメイトを募集して、ルームシェアを続けるだけでは問題があったのでしょうか。

「それはルームシェアに求める条件の違いですね。日本では家賃が安いからとか家財道具がないからとか、金銭的なメリットを重視してルームシェアをする傾向がまだまだ強いと感じます」

先ほど述べられていたように、人と人のつながりを重視するAさんが求めるシェアのあり方とは、根本から食い違ってしまっているんですね。

「一緒に住むことで、お互いの趣味とか知見を共有しながら、相互に高め合えるような実りある生活をできることがシェアのメリットだと思っています。しかし、似た思いを抱いている相手を、一般的なルームシェア募集サイトから探すのは困難でした。そのため、日本でもサービスを始めていたAirbnbに登録しました。お金のためだけではなく、旅行者を受け入れるホームステイのような感覚で民泊を始めたんです。ただ、民泊新法の施行に伴い、マンションの管理規約で民泊が禁止となったため、現在は民泊をやめています」

ゆっくりくつろいだり、時にはゲストとの語らいの場になるリビング※写真はイメージです(写真撮影/宮崎 林太郎)

ゆっくりくつろいだり、時にはゲストとの語らいの場になるリビング※写真はイメージです(写真撮影/宮崎 林太郎)

トラブル経験ゼロ!信頼できるゲストを見極めるコツ

民泊を通じて、いろいろな経験をもつゲストとの交流を育んできたAさん。宿泊者との不和は一度もなく、それまで名前も顔も知らなかった人たちが帰るころには友だちになり、その多くが今でも連絡を取り合っているといいます(リピーターになってくれたゲストも多いそうですよ!)。宿泊の申し込みに対して、どのようにしてゲストを見極めていたのでしょうか。

「ホストは民泊として提供する住宅の情報を、マッチングサイトに掲載します。物件の写真はもちろん、女性限定であるとか、駅からの所要時間、設備仕様、注意事項など、必要な情報はしっかりと掲載しています。そうした物件の詳細をちゃんと読んでいるかどうかが選定基準のひとつです。にもかかわらず、駅からの所要時間を聞いてきたり、チェックイン時間の変更を強いるなど、そこに書いてあることを無視するような質問や提案をする人については宿泊をお断りしていました」

駅からの所要時間などは非常に目立つように掲載されていますし、設備やアメニティグッズ、部屋の広さや快適に過ごすための人数までしっかり書かれています。これを読んでいないと思わせる質問、あるいはルールをねじ曲げるような要求は、端からルールを守る気はないと捉えられても仕方ないかもしれませんね。

「もうひとつ、民泊の申し込みはメールで来るのですが、その文面が自己紹介から始まっているかどうかも判断基準のひとつです。思いのこもったメッセージをくれる人の旅はきっと良いものになると思うんです。そんな人がたくさんある宿泊施設からわが家を選んでくれたんですから、東京で良い思い出をつくって帰ってもらいたいと思うじゃないですか。お互いの経験してきたことを語り合うのもすごく楽しいですよ」

ゲストの心をつかむおもてなしの陰には、ゲスト自身のホストに対する気配りが隠れているんですね。良きにしろ悪しきにしろ、行いの結果は自身に返ってくる。因果応報とはよく言ったものです。宿泊の問い合わせをしてくる人のなかで、宿泊OKとNGの割合はどちらが多かったのでしょうか。

「ほとんどOKでしたね。一般的なバックパッカー専用の宿などと比べると値段設定を高めにしているので、それでも泊まりたいという人は、その辺りのマナーがしっかりしている人が多いのだと思います」

宿泊条件を設定するところから、ゲストとのトラブルを未然に回避するための予防線を張り巡らせているんですね。実際にゲストが宿泊するときに、意識していることはありますか?

「電車内で電話はNG、静かな場所で大きな声を出すとトラブルの原因になるなど、日本のモラルも教えますし、マンションの共同ゴミ捨て場はゲストに使用させないことを徹底。室内の共用部(キッチンやトイレ、お風呂など)の利用ルールなども一通り説明しています」

さすが、配慮が行き届いています。細かいようですが、言葉を尽くすというのは大事なポイントですね。私はつい「言わなくても分かるでしょ」と考えがちなので、ちょっと反省しました。

「日本に旅行に来る外国人は、日本の文化をリスペクトしている人が多いので、きちんと説明すれば理解し、順応してくれます。ゲストに対しておもてなしをするのは当然ですが、ゲストに対する説明や要求もホストの責任だと思います」

ゲストが持参したお土産の数々。そのひとつひとつに思い出が詰まっている(写真撮影/宮崎 林太郎)

ゲストが持参したお土産の数々。そのひとつひとつに思い出が詰まっている(写真撮影/宮崎 林太郎)

自身の経験をもとに民泊のホストとして、多くのゲストを迎え、充足した東京ライフを提供してきたAさん。トラブルが増えると、今後も民泊を禁止するマンションが増える可能性があります。Aさんは、彼女のようにゲストとの交流を楽しんでいるホームステイ型のホストが、民泊から撤退を余儀なくされてしまうことが残念だといいます。民泊への理解が深まり、ホームステイ型の民泊が日本にも広まることで、さまざまなトラブルや問題が解決していくのではないでしょうか。

引用元: suumo.jp/journal

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