あと2年半で東京の新築住宅の太陽光発電設置が義務化! メリット・デメリッ…

東京都の新築住宅への太陽光発電設置義務化って、実際にどうよ?

(写真/PIXTA)

東京都が2025年4月から新築住宅に太陽光発電の設置を義務づけるという基本方針を決めた。このニュースはかなり話題になり、都民の声は賛否両論だった。都内で新築住宅を建てたり買ったりする場合、必ず太陽光発電を設置しなければならなくなるかというと、そういうわけではない。詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針」の策定について/東京都

東京都は、なぜ太陽光発電の設置義務化に踏み切ったのか?

東京都では、「2050年ゼロエミッション東京」の実現に向け、「2030年カーボンハーフ」を表明している。2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)=「カーボンハーフ」するために、さまざまな施策を打ち出している。今回、東京都が策定した「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針(案)」に盛り込まれたのが、2025年4月からの新築住宅への太陽光発電の設置義務化だ。

都内のCO2排出量の32.3%を家庭部門(住宅)が占めているが、単身世帯の増加により都内の世帯数が増えていることもあって、業務部門や運輸部門等ではエネルギー消費が減っているのに対し、家庭部門だけは増え続けている。

そこで、住宅の省エネ化を推進しようと考えられたのが、「東京ゼロエミ住宅」。東京の地域特性などを踏まえて、都が独自に定めた高い断熱性能をもった断熱材や窓を使って、省エネ性能の高い家電製品などを取り入れた住宅だ。東京ゼロエミ住宅を支援する補助金の制度なども設けてきた。

一方で、都内の建物の屋根にも着目した。都内には、住宅の敷地が狭くて屋根が小さかったり、住宅が密集して隣家の陽当たりを確保するために屋根が変則的な形になったりする場合も多い。そうなると太陽光発電設備を設置しても、十分な発電量が得られないことから、「東京ソーラー屋根台帳(ポテンシャルマップ)」を公開するなどしてきた。地図上のどの建物の屋根に太陽光発電を設置すれば、どの程度の発電量が見込めるかわかるというものだ。ただし、設置に適しているとする建物のうちの4.24%しか設置されていないのが実情だ。

そのため、太陽光発電の搭載に適した建物には極力設置しようと考えて、新築住宅への義務化に舵を切ったのだ。

設置の義務を負うのは誰?すべての新築住宅に設置しなければならない?

太陽光発電の設置義務化について、さまざまな疑問が湧くだろう。1つずつ詳しく見ていこう。

疑問1:設置する義務があるのは誰か?
注文住宅の建設事業者や建売住宅を新築分譲する事業者が対象で、都内に一定以上(年間の都内供給延床面積が合計2万平米以上)の建物を供給する50社程度が義務化の対象となる見込みだ。

疑問2:日当たりの悪い住宅や狭小な住宅でも設置しなければならない?
義務化の対象となる大手の住宅供給事業者には、供給棟数に応じた再エネ発電量の総量が求められる。各事業者は、その総量を達成するために、新たに供給するどの建物に太陽光発電を設置するかを判断していく。設置に適さない住宅(算出対象屋根面積 20 平米未満など)については、設置基準算定から除外可能としている。

疑問3:太陽光発電設備を設置するとどんなメリットがある?
東京都の資料によると、4kWの太陽光パネルを設置した場合、初期費用98万円が10年(現行の補助金を活用した場合6年)程度で回収可能。30年間の支出(※)と収入を比較すると、119万円程度(現行の補助金を利用した場合は159万円程度)の経済効果がある計算になる、という。

※専門業者による「点検」や発電した電気を家庭で使えるように変換するための「パワーコンディショナーの交換」などの費用を支出に加算。ただし、設備をリサイクルする際には、別途30万円程度の費用が発生。

住宅供給事業者が太陽光発電に適していると判断した住宅については、事業者が設置のメリットなどを丁寧に説明して、注文住宅の施主や新築分譲住宅の購入者は納得したうえで建てたり買ったりすることになるだろう。

住宅所有者のメリット・デメリットと今後の課題

さて、義務化により太陽光発電設備が設置された住宅の所有者は、原則として、その設置費用や使用する間のメンテナンス費用、最終的に廃棄(またはリサイクル)する際の費用などを負担することになる。売電収入で補う方法が先ほどの東京都の試算だ。

一方、固定価格買取制度による電力の買取価格は下がっている。逆に、さまざまな要因で電力会社の電気代は上がっている。そのため現状は、発電した電気を売るよりも自宅で使うことで節約する人の方が多い。自宅で使う場合には、発電しない夜間に電気を使えるように家庭用蓄電池も設置する必要があり、それには別途の費用もかかる。

ただし、災害などで停電になった場合でも、日中は太陽光発電により、夜間や雨天は蓄電池により、自宅で電気を使うことができる。いわゆる災害に強い住宅になるわけだ。

環境省の「太陽光発電設備の導入意向に関するアンケート調査」(2018年10月実施)の結果を見ると、太陽光発電設備を導入したい理由としては、「発電された電力を自宅で使用することで電気料金を節約するため」が最も多く、「地球環境への貢献」と「売電収入」が続き、「災害、停電時の非常用の電源とするため」の順となった。

一方、導入を希望しない理由としては、「初期投資費用が高いため」が最も多く、「投資回収年数が長い」と「設備が壊れたり修理やメンテナンスで高額な費用がかからないか不安」が続き、「買取価格が下がるなどでどれくらいの年数で投資が回収できるか不安」の順となった。

いずれにしても、投資回収期間が長くなるので、その間の電力買取の仕組みを安定させること、初期投資費用を抑えられるように支援制度を用意すること、設備の廃棄・リサイクルの仕組みを整備することなどが必要となる。初期費用を抑える方法として、補助金などのほかに、都ではリースや屋根貸しなどの手法も推し進めたい考えだ。

出典:東京都「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針(案)」より転載

出典:東京都「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針(案)」より転載

東京都は2022年12月の第4回都議会定例会で条例改正案を提出し、議決後2年程度の準備・周知期間を設けたうえで、2025年4月の施行を目指すとしている。支援制度などの詳細はその間に決まるだろう。

一方、政府も「2030 年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」としている。太陽光発電設備などの設置を推し進める方針なので、家庭で発電した電力を安定して買い取る仕組みづくりに力を入れてほしい。

引用元: suumo.jp/journal