住宅ローン「変動型」利用者が減少傾向に。金利上昇リスクを抑えるには?

住宅ローン、変動型の利用比率減少でも7割が利用。金利上昇で特にリスクが高いのは・・・?

(写真/PIXTA)

住宅金融支援機構が発表した「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」によると、増加していた「変動型」の利用者が減少に転じたという。それでもなお、約7割が変動型を利用している。金利が上昇した場合、変動型を利用していても問題はないのだろうか?
【今週の住活トピック】
「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」を発表/住宅金融支援機構

「変動型」が減少し、「固定期間選択型」と「全期間固定型」が増加

まず、住宅ローンの金利タイプについておさらいしておこう。35年などの返済期間を通して金利が固定される「全期間固定型」、当初の3年や5年、10年などの選択した一定期間だけ金利が固定される「固定期間選択型」、半年ごとに金利が見直される「変動型」の3タイプがある。今のような低金利の局面において、全期間固定型は変動型よりも金利が高く設定されている。

次に、調査対象者や時期を確認しよう。調査対象は、2022年4月~9月の間に住宅ローンを借りた1500件で、調査は2022年10月~11月に実施された。金融緩和策を維持してきた日本銀行が、長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に広げ、実質の利上げかといわれたのが、2022年の年末のこと。これにより、いよいよ金利上昇が現実的になってきたと指摘されたのだが、これよりも前に住宅ローンを借りた人に調査を実施したことになる。

では、調査結果を見ていこう。今回の調査で注目されたのは、「変動型」が減少したこと。代わって「固定期間選択型」や「全期間固定型」が増加した。それでも、69.9%が変動型を選んでいる。やはり、変動型の低金利に魅力を感じるということだろう。

利用した金利タイプ

利用した金利タイプ(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」)

低金利のメリットを活かしたい人が多いなか、金利の上昇リスクを抑えたいと考えて、全期間固定型や固定期間選択型を選んだ人が以前より増えたのだろう。

実際に「今後1年間の住宅ローンの金利見通し」を聞いた結果は、「現状より上昇する」が41.7%になり、前回調査(2022年4月調査)の39.2%よりわずかに増えた。特に、全期間固定型を選んだ人では、上昇するという回答が、前回の45.1%から今回の52.7%に増加している。変動型より金利は高く設定されているものの、低金利のいまのうちに全期間の金利を固定してしまおうと考えた人もいたのだろう。

変動型を選んだ約7割のなかでも、金利上昇に強い人、弱い人がいる

調査時期よりも現時点のほうが、金利上昇が現実的になっている。実際に、全期間固定型の代表となる【フラット35】の最頻金利※は、2023年3月時点で、5カ月連続で上昇した。変動型はまだまだ金利が上昇する気配はないが、長期に金利を固定するものは少し上がっているのだ。
※※最頻金利とは、取扱金融機関が提供する最も多い金利のこと

つまり、これから考えるべきリスクは金利が上昇することで、利息が増え、毎月の返済額(ボーナス時加算も併用していればその返済額も)が増えてしまうことだ。返済額が増えても、家計に支障がない人もいれば、それによって返済が難しくなる人もいるだろう。

まず気になる点、その1は「融資率」だ。住宅価格(注文住宅なら建築費用)の何割を住宅ローンで充当するかで、頭金を1割入れていれば、9割が住宅ローンとなる。調査結果を見ると、変動型を選んだ人が最も多いのが「90%超100%以下」ということだ。さらに「100%超」つまり、住宅価格だけでなく諸費用分まで借りた人でも、変動型を選んだ人が多いのも気になる。

融資率

融資率(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」)

融資率90%超で変動型を選んだ理由が、低金利の変動型でなければそこまで借りられなかったという人は、要注意だ。

例えば、毎月12万円の返済(年間返済額144万円)で住宅ローンを35年返済で借りるとする。変動型(金利0.45%で試算)なら、借入可能額は4662万円だが、全期間固定型(金利1.45%で試算)なら借入可能額は3950万円に下がる。毎月12万円の返済で4500万円を借りたい場合は、変動型などの低金利のものしか選択できないということになる。

もちろん、月々の家計に余力があれば、金利上昇に伴う返済額の増加の影響は少ない。その意味では、気になる点、その2は「返済負担率」となる。返済負担率とは、年収に対して年間の住宅ローンの返済額が何%になるかを表すものだ。

一般的に住宅ローンでは、年収が高くなるほど、高い返済負担率でも借りられるようになる。例えば、先ほどの事例(毎月返済額12万円)では、年収600万円の人なら、返済負担率は24%なので問題はない。これに対して、年収400万円の人だと返済負担率が36%まで上がるので、金融機関側から借入額を減らして毎月の返済額を抑えるように求められることになる。

返済負担率

返済負担率(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」)

調査結果を見ると、多くの人が返済負担率10%超から25%以内の安全圏で借りている。が、年収400万円以下の人で返済負担率25%~30%だったり、高年収でも支出の多い家計で返済負担率が35%超だったりすると、支出の削減が難しい場合もあるので、金利上昇に伴う返済額の増加の影響が大きくなるだろう。

金利上昇リスクに対して具体策をもとう

そして最も気になる点、その3が「金利上昇リスクへの対応を考えていない」場合だ。調査結果を見ると、変動型を借りている人で、金利上昇で返済額が増加した場合の対応について「見当がつかない、わからない」という人が20.7%もいる。

金利上昇に伴う返済額増加への対応

金利上昇に伴う返済額増加への対応(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」)

資金に余力があって、返済を継続できる(31.6%)、全額完済できる(13.6%)なら問題はない。また、「一部繰り上げ返済をする」(24.5%)という人も多いのだが、元金の一部を繰り上げて返済するので、そのための資金が必要になる。「借り換え」(9.0%)も同様で、相応の諸費用がかかる。貯金に余裕がなくて融資率9割超という人には、難しい対応策かもしれない。

また、金利上昇のために変動型から借り換える場合、借り換え先の金利も上昇しているはずだし、一般的に変動型よりも先に長期間金利を固定するタイプが上がっていくので、金利上昇に気づいたときには、すでに借り換え先の金利も上がっていてリスク回避の効果がないという場合もあるだろう。

変動型は金利が上昇しても急激に返済額は増えないけれど…

急激に金利が上昇したバブル期のときに導入されたのが、変動型の5年ルールだ。急激に返済額が増加するのを抑えるために、金利が上昇して利息が増えても、返済額の設定見直しは5年おきとし、返済額を増やす場合でも1.25倍までに制限するというもの。今でもこのルールを適用する金融機関は多い。

したがって変動型で金利が上昇した場合でも、このルールによって、急激に返済額が増える事態にはならない。しかし、返済額が増えないだけで、支払うべき未払い利息は残る。元金も減らないため、トータルの利息はどんどん積み上がることになる。

住宅ローンは35年間などの長期間にわたって返済するものだ。自分や共に住宅ローンを借りたパートナー、あるいは勤務先の事業などによって、収入が想定より減ってしまうリスクもあるので、目いっぱい借りてしまうことに注意したい。さらに、金利上昇リスクが高まる状況なので、これから借りる人はぜひ、金利が上昇したときにどう対応するかを考えて、住宅ローンを選ぶようにしてほしい。

●関連リンク
「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」(住宅金融支援機構)
引用元: suumo.jp/journal