4月から制度が変わる【フラット35】借りる人は要注意!

4月から制度が変わる【フラット35】借りる人は要注意!

(画像/PIXTA)

35年などの長期間にわたり金利が固定される住宅ローンの【フラット35】。住宅ローンを借りようと考えている人なら、一度は検討したことがあるだろう。実は、4月1日からは利用条件などの一部が変わる。詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
「【フラット35】2020年4月の主な制度変更事項のお知らせ」を発表/住宅金融支援機構

買い替えで【フラット35】を利用する人は注意を

まず、【フラット35】の特徴についておさらいしておこう。

住宅金融支援機構と民間金融機関が提携している住宅ローンで、長期固定金利である点が大きな特徴。借りる際の窓口となる提携先の民間金融機関によって、適用される金利や融資手数料が異なる点が注意点だ。公的機関が関わっているローンなので、一定の品質が確保されていると認められた住宅でないと、借りることはできない。

最もよく利用される【フラット35】(返済期間21年以上35年以下)で3月時点の適用金利を見ると、金融機関によって異なるため、1.24%~年1.87%の範囲になっている。最も多くの金融機関が設定している金利は1.24%だ。この低金利を固定できるのは、確かに魅力的だろう。

利用条件を見ていこう。申込時の年齢が満70歳未満(親子リレー返済利用者を除く)で、返済期間は15年以上35年以下で最長80歳までのローンが組める。したがって、15年未満(ただし、申込本人または連帯債務者が60歳以上の場合は10年未満)の場合は利用できない。

借入額は、購入価格までで100万円以上8000万円以下(1万円単位)だが、総返済負担率を満たす必要がある。

総返済負担率とは、「年収に占める年間合計返済額の割合」だ。計算式は、次のようになる。

出典:住宅金融支援機構のホームページ「2020年4月【フラット35】制度変更のお知らせ」より転載

出典:住宅金融支援機構のホームページ「2020年4月【フラット35】制度変更のお知らせ」より転載

総返済負担率が、次の基準を満たさないと希望額まで借りられない場合もある。

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さて、この計算式の分子に当たる「全ての借り入れの年間合計返済額」とは、今回借りようとしている【フラット35】だけでなく、他のローン、例えば教育ローンや自動車ローンなど現在分割払いで返済している額全てが合計される。

マイホームを売却して、新たに住宅ローンを組んで次の家を買おうとするときに、マイホームの住宅ローンが残っていることがある。その場合、返済中の住宅ローンの返済額が合計される可能性もある。ただし、売った資金で残りのローンを完済できるのであれば、その返済額を含める必要はないだろう。

2020年4月からの変更点の一つが、買い替えにかかわるものだ。

○変更点:売却予定の住宅にかかわる住宅ローンの取り扱いの見直し
返済中の住宅ローンの融資対象のマイホームを売却する予定で、売却予定額を利用して住宅ローンの完済ができることが確認できる場合に限り、その住宅ローンの返済額を年間合計返済額から除くことができる。

これまでは、売却手続きに入っていることが確認できれば、その住宅ローンは年間合計返済額に含めなかったが、4月からは完済見通しのあることを資料などで確認されることになる。ただし、売却予定額が住宅ローンの残高に満たない場合でも、手持ち資金などを使って完済ができるのであれば問題はない。買い替えで【フラット35】を利用しようと考えている人は知っておいた方がよい変更点だ。

【フラット35】に借り換えるけど、残りの返済年数が短いに朗報?

【フラット35】は借り換えにも利用できる。住宅ローンの借り換えの場合、住宅ローンの残高を別のローンに組み直すわけだが、新たに35年借りられるわけではない。当然ながら、当初借りた住宅ローンの経過期間を35年から差し引いた年数が上限になる。

【フラット35】は借入期間が15年より短い場合は【フラット35】借換融資の対象にならなかった。それを一部見直して15年未満でも利用できるようになる。

○変更点:【フラット35】借換融資の借入期間を一部見直し
(1)「80歳 - 借換融資の申込時の年齢(1年未満は切り上げ)」
(2)「35年 - 住宅取得時に借り入れた住宅ローンの経過年数(1年未満は切り上げ)」
(1)または(2)いずれか短い年数を上限とする
ただし、(2)の年数が15年(申込本人または連帯債務者が満60歳以上の場合は10年)より短くなる場合はその年数を上限として借入期間を設定可能(この場合の下限は1年)
※申込時の年齢が満70歳以上の場合は利用できない(親子リレー返済利用者を除く)

4月からは、当初借りた住宅ローンの残りの返済期間が短い場合でも、【フラット35】が利用できる可能性が生まれるわけだ。

【フラット35】を不動産投資用の物件の取得に使うことはできない

2018年に発覚したのが、【フラット35】を不動産投資用物件の取得に不正に利用した事例だ。住宅ローンが事業用のローンに比べ、低金利で長期間の返済を可能にしているのは、本人や家族が住むためのマイホームを手に入れるためだからだ。賃貸住宅として投資する物件は事業目的であり、もちろん利用対象外だ。

ところが、自分が住むための住宅とする偽った書類を作り、実際にはその借入資金で投資用物件を取得・運用していた事例があり、2019年に住宅金融支援機構が調査したところ、住宅購入価格の水増しも含めて、162件の不正事例が確認された。

こうした不正利用を防止する直接的な打ち手ではないが、悪用懸念のある制度の隙間を埋めるために、4月から次のような変更も行われる。

○変更点:総返済負担率の「年間合計返済額」の対象に賃貸予定または賃貸中の住宅にかかわる借入金の返済額を追加する
○変更点:セカンドハウスを取得するために【フラット35】を二重に借り入れることはできない

【フラット35】はマイホームだけでなく、本人や家族が利用するセカンドハウスにも利用できる。今回の変更点では、すでにセカンドハウスで融資を受けているのに、さらに別のセカンドハウスでも、というのがNGになる。拠点となるマイホームの融資に加えて、セカンドハウスを買う場合なら問題はない。

そもそも不動産投資用物件の取得に【フラット35】を利用することはできない。それが分かった場合は、不正な利用として借入額の一括返済を求められることもある。

さて、2020年4月からの変更点は、特定の対象者に限られる内容なので、多くの人には大きな影響はないだろう。とはいえ、今回対象となる一部の人にとっては、変更点を知っているか知らないかで、資金計画が変わるということもあるだろう。

住宅ローンのように長く付き合うものについては、正しい情報をタイムリーに入手することが大切だ。

引用元: suumo.jp/journal