「お店部屋」のすごい世界。超本格ゲーセン、サイゼリヤを家で再現する人々

「お店部屋」のすごい世界。超本格ゲーセン、サイゼリヤを家で再現する人々
新型コロナウイルスの影響で「おうち時間」の重要性が高まった今年。SNS上では、部屋を自分たちだけが楽しめる空間にしたり、好きなお店を再現するといった取り組みをする人々に注目が集まりはじめている。
今回は、大規模なおうちゲームセンター(ゲーセン)をつくりあげて夢をかなえた戸矢孝一さんと、部屋で“サイゼリヤ”や“駄菓子屋”を再現した千葉真理さんのお二人に、始めようと思ったきっかけ、こだわったポイントについてお話を伺った。

海外からもゲーム筐体をかき集め、世界的に貴重な空間をつくりあげた

バーチャファイターからぴょんぴょんまでおなじみのゲームが勢揃い(写真撮影/戸矢孝一)

バーチャファイターからぴょんぴょんまでおなじみのゲームが勢ぞろい(写真撮影/戸矢孝一)

まず紹介するのは、おうちに大規模なゲームセンター部屋をつくってしまった戸矢孝一さん

42歳既婚、ゲーセン黄金期を知る世代。「小さいころからお小遣いを全額ぶち込む勢いでゲームをやっていました」と語る彼は、「これが自宅にあればいいな……」という童心から、とてつもない“自宅ゲーセン”を築いた。

戸矢さんが最初にゲーム筐体1台を家に置いたのは10年ほど前。そして2016年ごろから、本格的な収集をはじめたという。

「本格的に集め始めたらスペースが無くなり家を新築することになって、いよいよ一部屋をゲーセンにしちゃうかと思ったら、ガレージまでゲーセンになっていました」(戸矢さん)

(写真撮影/戸矢孝一)

(写真撮影/戸矢孝一)

「アフターバーナー(1987年にセガが発売したアーケードゲーム)はすごく貴重だから、ネットオークションで出品されたのを見た瞬間にそのまま買っちゃって。それで商品の場所を見たら『ニューヨーク』って書いてあるのに気づきました。アメリカでも東海岸。空便では運べないから、まずアメリカ横断の陸送からスタートしてシアトルから船便で。知人へ譲ったものも含めて、2台合わせて輸送代だけで150万円。そこから直すのに1年半かかりました」(戸矢さん)

世界的にも貴重な一台(写真撮影/戸矢孝一)

世界的にも貴重な一台(写真撮影/戸矢孝一)

そもそも古い筐体は経年劣化で次々と壊れる上、南米やヨーロッパなど各国ではレトロゲーセンも流行っているために日本の業者が軒並み筐体を海外へ輸出してしまい、在庫不足で値段は高騰する一方だという。

「当時のゲーマーも40~50代になって遊べるお金が増えて、高くても買う人が増えたのも一因です」(戸矢さん)

所蔵する「アウトラン(1986年に発売されたアーケードレースゲーム)」などセガの体感ゲームシリーズは軽く100万円に達し、対戦型格闘ゲームでも最安期では1万3000円ほどだったスーパーストリートファイターIIXが現在は10万円ほどで、「ネットオークションで25万円ほどで入札されていたのを見ました」(戸矢さん)

ほかにも格闘ゲームでは「サムライスピリッツ」や「餓狼伝説」の小さいネオジオ筐体のもので20万円くらい。メダルゲームの「ジャンケンマン」も8万円ほどするとか。このコレクションを集めた総額は「怖いから計算したこと無い」そう。

(写真撮影/戸矢孝一)

(写真撮影/戸矢孝一)

「でもお金だけじゃダメ。30~40年ものの古い筐体ばかりだから修理の腕も必要で、あとは粘り。インベーダーゲームごろからゲームセンターをやっている店主から、3時間半の立ち話を2回繰り返して、信用を得てからやっと手に入れたものもあります」(戸矢さん)

この100円両替機の導入にも7万~8万円かけたという。普及機なのに、最近はあまり見かけない部分に味を感じているそうだ。

味のある100円両替機(写真撮影/戸矢孝一)

味のある100円両替機(写真撮影/戸矢孝一)

「両替をしたお金をチャリンと入れて遊ぶまでがゲーセンの作法。実際に100円玉を入れないと真剣味が出ないんですよね」(戸矢さん)

1年がかりで「カップヌードル自販機」納入

さらに、戸矢さんはカップヌードルの自販機まで導入している。「ゲーセンで、なけなしのお金で買ったカップラーメンがおいしかったから。プールサイドの焼きそばがなぜかうまく感じるのと同じ」と語るが、何となく分かる。

(写真撮影/戸矢孝一)

(写真撮影/戸矢孝一)

「陸送で持ってきたはいいけれども、西濃運輸の営業所留めで、営業所から家まで持ってくることから大変でした。クレーン付きトラックを持っている個人の運送屋さんを探し出して、家の駐車場までは運んでもらったけど、家の中に持ち込む方法がなくて1年間放置しました」

庭に1年間置いたままだったカップヌードル自販機(写真撮影/戸矢孝一)

庭に1年間置いたままだったカップヌードル自販機(写真撮影/戸矢孝一)

「しょうがないからハンドフォークリフトを買って、中に突っ込み対応しました。おかげで300キロするアフターバーナーの筐体も動かせるようになりました」(戸矢さん)

(写真撮影/戸矢孝一)

(写真撮影/戸矢孝一)

カップヌードルにお湯を入れる。ここまでにとてつもない労力がかかったそう(写真撮影/戸矢孝一)

カップヌードルにお湯を入れる。ここまでにとてつもない労力がかかったそう(写真撮影/戸矢孝一)

お湯を入れるために、家の水道管も分岐しました。買ってお湯まで注いで、食べられるところまで構築するのがロマンだから。フォークも日清の標準に可能な限りなく近い、透明の短いフォークじゃないと」(戸矢さん)

カップヌードル自販機とともに育った世代なら、納得のこだわり。ドリンク自販機もあり、普段づかいで1日2~3本は飲んでいて、懐かしの250ml縦長缶をセットすることが多いそう。

「構造的には冷蔵庫だし、電気代も高くないんですよね。あえて硬貨を2種類使う110円にしたから、チャリンチャリンと入れて、落下した缶がガコーンって響くのがいい。業務用のキンキンに冷えた缶ジュースが楽しめるし、何を入れるかのセレクトも楽しい」

(写真撮影/戸矢孝一)

(写真撮影/戸矢孝一)

幻の一台をついに手に入れた

戸谷さんが個人的に好きなのが、子どものころに遊んだ「おしゃべりオ~ム」と「はっぴーロボ」。小さなカプセルトイがもらえる機種だ。中でも後者は、絶滅寸前の1台を引き取ったという。

(画像提供/戸矢孝一)

(画像提供/戸矢孝一)

「当時、10円ほどで遊べても、なかなか当たらずになけなしの100円がアッという間になくなりました。当たっても景品は変な消しゴムや、引き出物のケーキの上にある梅の花の飾りとか。大人のずるさを知りました(笑)」(戸矢さん)

このゲーセンだが、近い未来に民泊にしていきたいとのこと。

「ゲーム好きな世界の人たちに寄ってもらいたいです。自宅ゲーセンを通じてつながっていきたい」(戸矢さん)

コロナ以前にはTwitterで知り合ったチリの友人も招いた(写真撮影/戸矢孝一)

コロナ以前にはツイッターで知り合ったチリの友人も招いた(写真撮影/戸矢孝一)

「コロナ禍で稼働していたのは、全国でもうちのゲーセンぐらい」と冗談を飛ばす戸矢さん。家族で充実した日々を過ごすのに、ゲーセン部屋も大いに役立った。「いままでやってみたかった環境を構築できて、満足しています」(戸矢さん)

「ゲーセン部屋は9畳で、ガレージのほうが24畳。ガレージには車を2台入れる予定だったから。でも普通であれば、6畳間でつくってもけっこうな数が入るし、立派なゲーセン部屋になると思います」(戸矢さん)。

なお自宅ゲーセンを気軽に始めたい人におすすめなのは、UFOキャッチャーとのこと。ネットオークションで2万円ほどで取引されているそう。ただサイズが大きく、畳一枚分ぐらいのスペースを占有するのでご注意を。

遊んで食べて子どもが計算をマスター! 「おうち駄菓子屋」

マンネリ化しやすい外出自粛期間で、気軽で子どもと一緒に楽しめる「おうち駄菓子屋」はSNS上でひとつのムーブメントとなったが、そのなかでも完成度が高かったのが千葉真理さん

はじめたきっかけは、コロナ禍で緊急事態宣言が出る前に駄菓子屋さんへ通っていて、家に閉じこもる日々で思った「おうちに駄菓子屋をつくっちゃえ」という思いだったそう。

(写真撮影/千葉真理)

(写真撮影/千葉真理)

子どものびっくりした顔が見たくて、寝た後に夫婦でこそこそと作業し、サプライズでお店を見せたという。

(写真撮影/千葉真理)

(写真撮影/千葉真理)

1日50円だけ何でも買ってOK。看板はPhotoshopでよごしを入れてレトロ感を醸し出した。

(写真撮影/千葉真理)

(写真撮影/千葉真理)

駄菓子屋の花形といえばくじ引きや当たりつきのお菓子。子どもが好きで、射幸心をくすぐられるそれらは豊富に用意した。手づくりのきな粉飴に加え、糸引き飴もセッティング。

きな粉飴は特に人気だったとのこと(写真撮影/千葉真理)

きな粉飴は特に人気だったとのこと(写真撮影/千葉真理)

こちらも自作した、つまようじを縦に落とすと景品が出てくる「落としくじ」。お風呂で遊べるおもちゃなどを景品に入れてその後のおうち遊びにも活かせるようにした。

(写真撮影/千葉真理)

(写真撮影/千葉真理)

「ほかも子どもが喜びそうなもの、目新しいようなものを中心に買いそろえました。私も子どものころから駄菓子を大人買いするのが夢だったので、すごい楽しくて。商品も随時刷新しています」(千葉さん)

(写真撮影/千葉真理)

(写真撮影/千葉真理)

おうち駄菓子屋ならではの強みが、床にお金とお菓子を置いてじっくり計算の勉強ができること。おかげで4歳の子どももスムーズに計算ができるようになったとのこと。

(写真撮影/千葉真理)

(写真撮影/千葉真理)

次はもっと大きな数の計算ができるようにと、お小遣いを80円に増やし、それに伴って個々の値段も30円→50円などと値上げしたという。家庭内インフレである。

ちなみにおうち駄菓子屋の開店は毎日午後3時だが、子どもが楽しみにしすぎて、まだ11時なのに『もう3時?』と毎日聞かれるとか。

家庭内で好きなチェーン店を再現。「おうちサイゼリヤ」

千葉家では、もともと看板を変えて、シーズンごとに「くら寿司」や「マクドナルド」や「サーティワン」などの“家庭内チェーン店”を開くのが定番だった。

(写真撮影/千葉真理)

(写真撮影/千葉真理)

その一環で「今回はサイゼリヤにしよう」と白羽の矢が立ったのだ。

(写真撮影/千葉真理)

(写真撮影/千葉真理)

サイゼリヤといえば、店内に飾られたこれらの絵。「あるとサイゼ感が沸くので、どんどん部屋の壁に貼りました」(千葉さん)

メニューまでも手づくりで再現(写真撮影/千葉真理)

メニューまでも手づくりで再現(写真撮影/千葉真理)

サイゼリヤの実際の料理もできる限り忠実に再現。子どもが参加できそうなものに加え、自分たちがよく頼むモノを中心に、家族会議でメニューを決めた。

(写真撮影/千葉真理)

(写真撮影/千葉真理)

特に人気だった料理は、子どもがつくったキノコのピザだったそう。

「キノコは手でもほぐせるから、子どもが参加しやすいと思って入れたんですが、彼自身も自分がつくったからいつもよりおいしく感じて、親も子どもの成長を感じられたうれしさがおいしさにつながりました。再現度が高くできておいしかったです」(千葉さん)

基本的にそのままメニューを再現しようとしているそうだが、特筆すべきは“エスカルゴ”。

「家にあるたこ焼き器でエスカルゴをつくったら面白いんじゃないかとなって、パパにエスカルゴっぽい別のものをスーパーで買ってもらった結果が「ちくわ」だったんです。主人が切り方を工夫してどうにか再現しました」(千葉さん)

ちくわ製の“エスカルゴ”(写真撮影/千葉真理)

ちくわ製の“エスカルゴ”(写真撮影/千葉真理)

「味はおいしかったです。でもよく味わうとちくわになっちゃうんで、エスカルゴって言い聞かせながら3人で食べました(笑)」

実際にサイゼリヤにあるドリンクで、ドリンクバーも実現。全部は集められなかったが、メロンソーダやカルピスなど好きなものをラインナップした。

注文する役と提供する役を交代しながら、お店感に浸った時間はとても楽しかったという。

ふだんご主人は日曜日しか休みがないが、イベント系のお仕事のために現在は自宅待機が続いている。でもそのおかげで家族の距離が近づく期間になった。「『いつか時間ができたら家族でやりたいね』って話していたことがたくさんかないました」(千葉さん)

少なくともワクチンや治療薬ができるまでは、まだまだ家での過ごし方が重要になってきそうな日々。毎日過ごす部屋を大好きな空間にしたり、好きなお店を再現するといったことをできる範囲でチャレンジしてみると、ワクワクする時間が待っているかもしれない。

引用元: suumo.jp/journal